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対戦相手の死を経て「今、僕が言うこと」 敢えてボクシングの魅力をリングで語った堤聖也の真意

TKO勝ち後、対戦相手に駆け寄る堤聖也【写真:徳原隆元】
TKO勝ち後、対戦相手に駆け寄る堤聖也【写真:徳原隆元】

仲間の優しさを感じる出来事「気にかけてくれる人ほど…」

 準備期間の短い試合だった。決まったのは米国合宿中の試合1か月前。いつもは2か月前から減量するため、主戦のバンタム級より2.5キロ重い56キロ契約でも「結構ギリ」と急ピッチで仕上げた。強いとは言えない相手。だからこそ、メンタルづくりも難しかった。

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「周りはイージーファイトだと思っている。僕が思ったらダメだけど、今まで対戦した強い奴らと比較すると、どうしても『楽』という気持ちが滲み出てしまう。それを頑張って封じ込めるために、試合前に『効かされる』『絶対に10ラウンドやる』と思って怖さを自分の中で出しながら持っていった。けど、やっぱり苦手ですね。負けると思われている方が気合いが入る」

 さらに「メンタルがどうこう言っている時点でまだまだ甘い」と付け加えた。

 試合では戦績だけで測れないものを感じた。「拳がマジで硬い。効かせるタイプ」と面食らった出だし。ダウンの不安も抱きながら攻めた。課題だった組み立てを意識し、ボディー攻めを相手が嫌がったところで意表をつくアッパー。顔を弾き、すぐさまボディーに切り替え。3回に2つ、4回にも2つダウンを奪い、完勝した。

「1発目から当てようとしてしまう。3、4回はよかったけど、1、2回からやらないと」と猛省。かつてWBAスーパー&IBF世界ライトフライ級2団体統一王者・田口良一氏とコンビを組んだ石原雄太トレーナーにも「3回の内容が初回だったらよかった。世界戦だとペースを取られてそのまま持って行かれてしまう。今よりレベルを上げていかないと世界を獲れない」と尻を叩かれた。

 バンタム級の主要4団体はWBAに井上拓真(大橋)、WBCに中谷潤人(M.T)、IBFに西田凌佑(六島)、WBOに武居由樹(大橋)が就き、日本人が独占している。堤の世界ランクはWBA2位、WBC11位、IBF3位、WBO7位。アマチュア時代に全国高校総体で敗れた井上をターゲットに世界挑戦を描く。

 外野に言われるまでもなく、課題は理解している。「練習でやってきたことのベストを出すって凄く難しい。今日みたいなパフォーマンス、仕上がりだと、どのチャンピオンにも絶対に勝てない」と気を引き締め、「世界戦をやったら絶対に勝つ」と王座奪取を誓った。

 実はこの7か月、仲間の優しさを切に感じる経験をした。「気にかけてくれる人ほど、別に何も言ってこない。そこに感謝しています」。いつも通り。だから少し気が和らいだ。そんな恩を返すためにも戦っていく。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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