“隠れ日本代表”も加われば「かなり強い日本に」 5度目のW杯への本音、新生ジャパンでLO転向も意欲――リーチマイケル・インタビュー
やがて“隠れ日本代表”が加われば「かなり強い日本代表になる」
リーチについて、ジョーンズHC再任時から注目されるのがLO転向問題だ。指揮官は「基本的にはFW第3列の選手。4番で起用する可能性もある」と説明するが、前任のジェイミー・ジョセフHC時代にはLO転向を拒否し、今回も当初は「フロントローを押せるような肩幅じゃない」と消極的だったリーチも、軌道修正しているようだ。
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「しっかりスクラムが組めれば、LOもやりたいなと思います。(LOが主に担う)ラインアウトでのボールキャッチは今までも得意だった。自分がLOに入ることで、いろいろなバリエーションが作れると思う。20番(リザーブのLO兼3列)でもいけるし、4番、6、7、8番をカバー出来れば自分のセールスポイントになるんじゃないか」
いまでも代表不動のメンバーという印象のリーチだが、本人の中ではこれからの代表選考の中で、自分が選ばれる新たなセールスポイントが必要だという思いもある。自分自身がLOと3列を兼務するユーティリティー選手になれば、控えメンバーの構成にも融通が利くという考え方だ。その背景には、リーチ自身のプレースタイルの変化がある。
東海大時代に代表クラスの選手に成長したリーチだが、当初はBKのようなスピードを持つNo8という攻撃的なキャラクターだった。奔放なランニングラグビーで知られるフィジー出身の母親の遺伝子もあるのだろう。だがキャリアを積む中で、アタック以上に危機察知能力をも生かした防御に持ち味が変わってきている。23年W杯での日本選手最多タックル(59回)という数値がその変貌をよく物語っているが、リーチ本人も「タックルのようなLOの仕事は好き」と自負する。LOとして密集戦、タックルで体を張るプレーにも自信を持っているからこそ、ポジションチェンジも厭わないのが2024年版のリーチマイケルだ。
新しい時代を迎えようとしている日本代表に対しても前向きだ。今回発表された代表メンバー35人のうち、昨秋のW杯経験者は15人、キャップ保有者は23人に対してノンキャップ12人と相当な若返りが図られた。FB松島幸太朗(東京SG)のように、今季を実質上のサバティカル(代表休止期間)に充てる主力選手もいるが、リーチは3年後のジャパンを、こう思い描いている。
「今回の平均年齢は25歳くらい(当初発表メンバーで26,1歳)。3年後には28歳になる。ちょうど体もいい状態になり、フィットネスもゲーム理解力も高くなっているはずです。それにプラスして、これから代表資格を得て入ってくる選手も含めると、相当いいメンバーになるんじゃないかと思います。ジェイコブ・ピアース(BL東京、LO)、ハリー・ホッキングス(東京SG、LO)だったり、オペティ・ヘル(S東京ベイ、PR)が入ってくるチームを考えると、かなり強い日本代表になると思う」
もちろん最終決断は個々の選手次第だが、外国人選手の「60か月の国内居住」という代表資格を今後クリアするであろう“隠れ日本代表”の潜在能力を踏まえると、2027年へ向けた選手層はかなり厚みを増していくというのがリーチの読みだ。その中で、こらから迎えるイングランドとのビッグマッチの価値も大きいと考えている。
「原田衛(BL東京、HO)やワーナー・ディアンズ(同、LO)ら若手がすごくいい経験が出来るのが今シーズンだと思う。彼らにとってはすごく大事な1年になるかなと思います」
これまでの主力メンバー数人が怪我や休養で代表参加を回避し、新たな“隠れ代表”が参入するまでの時間に、若手メンバーが実戦で経験値を積み上げることが、日本代表の課題でもある選手層の厚みを増すための最高の温床になるのは間違いない。強力なFWを伝統に、大型BKも揃えるイングランド代表は「世界」を知るためには最高の相手。同時にファンや世界のラグビー関係者に対しては、昨秋のW杯での直接対戦で完敗してプール戦敗退に終わった日本代表が、ジョーンズHCが復帰した新体制で存在感をアピールするためにもまたとないファーストテストになる。