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NBAスーパースターのカリーが74億円を寄付へ 慈善団体を通じて目指す教育支援の背景とその全容

「PLAY」では中学校の運動部も支援

 PLAYでは、体を動かす遊びに焦点を当てて支援している。米疾病管理予防センターでは1日に60分以上、体を動かすことを推奨しているが、オークランド地区の子どものうち、これを満たしているのは14%で、特に女子は9%しかいない。そこで、25の校庭を整備し、子どものデザインによる遊具の配置、マルチスポーツ場、サッカー場などを作る。これまでにも中学校の運動部活動も支援していたが、これを継続する。

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 カリーの設立した慈善団体が中学校の運動部活動をどのように支援しているのだろうか。オークランド統一学区の中学校運動部は『オークランド・アスレチック・リーグ・ミドルスクール』というリーグ組織を持っている。このリーグ組織をカリーの慈善団体がスポンサーとして支えているのだ。このリーグ組織は、日本の各市、各地区の中学校体育連盟をイメージしてもらうとよいだろう。『オークランド・アスレチック・リーグ・ミドルスクール』は、スポーツ活動が生徒の教育経験の重要な一部であると位置づけ、競技レベル、性別、性的指向、身体的ハンディキャップの有無にかかわらず、すべての生徒がスポーツを通じて全人格的な成長を遂げることができる安全で育成的な環境を持つリーグを作ることだと謳っている。リーグのホームページには、民間がどのようにして運動部活動を支援するかを明記し、ボランティア、寄付(企業、個人)などの方法を示している。

 カリーはなぜ、中学校の運動部を支援することにしたのか。子どもたちが、何を必要としたり、望んだりしているか、現状はどうなっているのかについて、米アスペン研究所に調査を依頼した。子どもたちは、レクリエーションセンターなどはあまり使用しておらず、体を動かして遊び、スポーツをしているのは学校が多いことがわかった。また、学校以外の場所での活動は保護者による送迎の負担が大きいことなどがデータからわかったという。こういったことから、小学生は学校の校庭で遊んだり、スポーツしたりできるように整備し、多くの生徒が中学校の運動部に入れるように施設、財政を補助することを決めた。経済的に苦しい地域に住み、低所得世帯で育つ子どもたちが、体を動かす機会を増やせることを目的とした運動部の地域展開の事例といえるのではないだろうか。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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