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日本愛を抱くブラジル人コーチ Jリーグ11チームで指導、「驚き」を感じた若き日のW杯戦士とは

「心の底から嬉しい」と語る2人の日本代表FWの成長

 それに対し「良い意味で大きな驚きだった」のが、岡崎慎司と前田大然だったそうだ。

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「岡崎と他の選手との違いは気持ちの強さだった。清水エスパルスに入団した頃は、怪我もしていて少し太っていた。しかし特にフィジカル面を少しでも高めようと、来る日も来る日も意欲的にトレーニングに取り組み、そのハングリー精神は桁違いだった」

 松本山雅FC時代に出会った前田大然も、まだ磨かれていない原石に過ぎなかった。

「大然には圧倒的なスピードと、それを持続する驚くほどの体力があった。しかしまだポジショニングに難があり、オフサイドにかかりやすく、それを気にすると今度はボールタッチが大きくなってタッチを割ってしまう。だから当時は、なかなか試合に絡めなかった」

 そんな原点の姿を見ているから、その後の2人の活躍は「心の底から嬉しい」と語る。

 そして日本サッカーの歴史の証人として、エルシオはこんな未来を展望している。

「日本がブラジルに追いつく日が来るのかは分からない。でもその差を埋めていくには、フィジカルの強化は一つの重要なポイントだと思う。ブラジルでは、だいたい15歳くらいからフィジカルの強化に努める。私自身もそれから20歳くらいまで信念を持って取り組んだから、15年間くらいプロで戦うことができた。フィジカルに不安がなくなれば、それが自信をもたらし、メンタル面での優位性を生み出していく」

 日本代表がさらに世界との差を詰め、追い越していくために、カギになるのは両ゴール前の攻防になる。

「サッカーで最終的に明暗を分けるのは、攻守ともにペナルティエリア内での戦いだ。攻撃なら三笘薫のように、圧倒的な個人技で違いを見せ、数多くのゴールチャンスを作れる選手が必要になる。さらに求められるのは、ブラジル流の表現をするなら9番のタレント。エリア内で狡猾さを発揮してゴールを生み出していける選手だ」

 もちろんゴールを陥れる選手とともに不可欠なのが、身体を張ってゴールを守れる存在になる。

「エリア内の最後の最後のリアクションで、ボールを弾き出す、シュートをブロックする……、つまり最後の砦になれる優秀なGKやセンターバックが育ってくれば、ワールドカップでも日本代表はベスト4に近づいていけるはずだよ」

 次回はエルシオが現在所属し、プロを目指すプロジェクトとして創設された相生学院高校サッカー部での実際の指導ぶりを紹介する。(文中敬称略)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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エルシオ

元Jリーグ・フィジカルコーチ 
1956年2月19日生まれ。ブラジル出身。現役時代はMFとしてポンチ・プレッタやサント・アンドレでプレーし、89年に川崎製鉄サッカー部へ移籍。同年限りで現役を引退すると指導者としてチームに残り、ヘッドコーチや監督を歴任した。93年に横浜フリューゲルスにフィジカルコーチとして加入すると、その後はJリーグや母国ブラジルのクラブを渡り歩いた。特に横浜フリューゲルス時代に選手として指導した反町康治氏(現・JFA技術委員長)の下で何度も仕事をし、アルビレックス新潟、湘南ベルマーレ、松本山雅FCでフィジカルコーチを務めた。昨季はSC相模原でフィジカルコーチを担当し、現在は相生学院高校サッカー部を指導している。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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