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6人の命が奪われた少年野球リーグの葛藤 米国社会の「子どものスポーツと銃撃事件」

運動部活動をするグラウンドで銃声が響くことも…

 ユバルディが悩んだ末にオールスターゲームを開催した一方で、カリフォルニアでは7月にギャング間の抗争を回避するためにNPOが主催したソフトボール大会で2人が死亡する発砲事件が発生し、8月にはアトランタのコミュニティの野球・ソフトボールグラウンドで銃殺事件が起こっている。警察の発表から誰がどのように野球かソフトボールをしていたかなどの詳しい状況はわからないが、ゲーム中に口論となり、発砲に至り、2人が亡くなり、6歳の子どもを含む4人がけがをした。

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 米ABCテレビ局によると、2021年8月20日から9月25日までで、アメリカンフットボール、サッカー、リトルリーグの試合などで合計22件の銃がらみの事件が発生したという。アメリカでは、学校で銃乱射事件が起こっている。校舎の中だけでなく、運動部活動をするグラウンドでも銃声が響くことがある。

 昨年10月にはアラバマ州の高校アメリカンフットボールの試合中に、スタジアムの出入り口付近で発砲があり、4人が負傷する事件があった。選手たちがプレーを中断し、グラウンドに伏せる様子の動画が残っている。

 ニューヨーク・サウスブロンクスの治安の悪い地域にある中学校の教員が、ソフトボール部活動を通じて子どもたちを支えようと奮闘するノンフィクション「レディ・タイガース」にも銃の問題が出てくる。せっかくチームとしてまとまりができ、ようやく試合ができるところまでこぎつけたのに、試合中に近くから銃声が聞こえ、中断を強いられた。

 銃による事件は多く、スポーツの場も例外ではない。

 ちょっと話が飛ぶが、アメリカはスポーツ時の安全性への意識は高いと思う。例えば、子どものスポーツでも、暑さ指数によって練習を行うかを判断し、暑い日には指数に従って練習を取りやめているし、脳震盪を軽視せずに疑いのあるときには、プレーを続行させないことは常識になっている。野球における投球数制限もその一部であるだろう。ちなみに、リトルリーグのチームはスポンサーをつけていることが多いが、リトルリーグの規定により、銃、タバコを宣伝するスポンサーをつけることはできない。

 スポーツ医科学とマネジメントの観点から、大きな怪我や慢性的な痛みを防ぐことは行われている。けれども、練習や試合会場で銃弾が飛び交えば、積み上げた安全対策は吹き飛び、アスリートや子ども、観戦する人は命の危険にさらされる。そのことを私はとても虚しいと感じる。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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