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名門バルサが最も重視する選手の資質は? スカウトが明かす逸材を見分ける明確な基準

バルサで活躍する選手は「スピードが断然優れている」

「いい選手は世界共通だよ。本質的なところは大きく変わらない。何より選手としてのパーソナリティを持っているか。それが重要で、言うまでもなくスピード、テクニック、メンタル、そして秀でた何かは持っていなければならない。少しずつ、どこかで優れている選手を評価することになるだろう。例えば単純にドリブルで絶対的に1対1に強かったら、それは原石だと感じるはずだ」

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 アレシャンコはディレクターとして、選手を型にはめすぎることの弊害も感じていた。彼自身、技術的に上手かったとは言えず、ファイトするキャラクターだった。技術やスピードに特化したスカウティングでは、パワーや闘争心の必要なポジションが弱くなってしまう。スカウティングでは“余白”を残していないと、闘将と言われたカルレス・プジョルのような選手を輩出できなかったはずだ。

 一方で興味深かったのは、現場のスカウトに話を聞いた時だ。

「他のチームはどうか分かりませんが、バルサが選手に求めるのはスピードです」

 2021年までバルサのチームスカウトを務めたジョゼップ・ボアダは、明確に基準を語っていた。

「バルサのトップチームで活躍する選手は、スピードが断然優れています。状況判断、走力、俊敏性を合わせた“プレーの速さ”というんですかね。もちろん、技術があることは前提での話です。蹴って走るだけのプレーヤーはバルサで通用しません。現代サッカーでは、上手いだけでも強いだけでもダメで、スピードが求められ、そこでの技術の高さがバルサでは欠かせないのです」

 プレースタイルに執着はしていないのだろうが、それは土台だ。

「現場では、やはりバルサのカラーに合った逸材を発掘する作業になります。その原石を下部組織で大事に磨いていく。その積み重ねがバルサと言えるでしょう」

 ボアダの言葉も一つの真理だった。

 画一化する現代サッカーで、バルサの薫陶を受けた少年たちは希少価値と言われる。ボールプレーに優れる上に、戦術理解力も高い。シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、リオネル・メッシはその育成によって生み出された英雄的選手だ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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