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日韓W杯で歴史的2ゴールも「活躍した印象ない」 稲本潤一が語る名場面誕生の瞬間

左足の絶妙なタッチから生まれたロシア戦の決勝点

 2点目の失点シーンについて、日本の最終ラインが高すぎたのではないか。もっと慎重にいくべきだったのではという声も上がったが、稲本はどう思っていたのだろうか。

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「正直、最終ラインについては何も思っていなかったです。あのラインコントールは、U-20(日本代表)からずっと同じことをやってきているし、ラインが高い、低いとかの判断は最終ラインの判断やと思っていたので、その指示に自分は従うだけでした。ただ、試合が終わった後、ミーティングでディフェンスラインの選手がトルシエに怒られていた。大事なところで失点したんで、それは言われると思いますけど、相手もその戦術を崩してくるんでね。それでも負けへんかったのは大きかった」

 日本は、初戦でW杯史上初めて勝ち点1を奪った。だが、それで喜んでいるわけにはいかなかった。この大会における日本代表のミッションは初勝利であり、グループリーグ突破だ。当時はまだW杯開催国が、グループリーグで姿を消す例がなかったのだ(2010年大会で南アフリカが敗退)。

「初戦は引き分けたけど、雰囲気は良かったです。やれるぞ、みたいな空気になっていましたし、ロシア戦もそのままの雰囲気で入っていけたと思います」

 2戦目のロシア戦は、グループリーグ突破を懸けた大事な試合になった。初戦、チュニジアに勝ったロシアは、日本に勝てばグループリーグ突破が決まる。日本は負けると追い込まれることになるため、絶対に負けられない試合になった。

 その一戦で、再び稲本が躍動する。

 後半5分、左サイドの中田浩二からのグラウンダーのクロスを、エリア内で待ち構えた柳沢がワンタッチで落とすと、ボールは稲本の足下へ。冷静に右足を振り抜くと、横浜国際総合競技場は地響きのような歓声に包まれ、沸点に達した。稲本はベンチに走り、歓喜の輪が広がった。

「あれは、最初、中田浩二からのセンタリングに反応しようと思って中に入って行ったんです。でも、たぶん浩二がセンタリングをミスって、それが柳(柳沢敦)さんの左足にいって、僕が目に入っていたのか、機転を利かして出してくれたのが大きかった。そこで自分も左足のワンタッチですごくいいところに止めることができた。シュートに関して言うと、特別あそこを狙ったわけじゃないんですけど、僕から見て、右サイドが空いていたんで、そこを狙ったら入った感じです」

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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