“世界の一流”が日本に集結 ラグビー・レジェンド対談、「根性と気合」の時代との変化
ラグビーの選手は「自分の言葉を持っている」
廣瀬、大野両氏が引退後も強い絆で結びつけられているのは、東芝だけではなく日本代表でもともに戦ってきたという背景がある。2004年に初代表入りし歴代最多の98キャップを持つ大野氏、そしてエディー・ジョーンズHC時代に初代主将を務めた廣瀬氏にとって、2015年W杯までの桜のジャージーでの時間も貴重でかけがえのない経験だった。対談はラグビー選手特有の「言葉の力」から、エディー時代の日本代表へと広がっていく。
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大野 「ラグビー選手って、インタビューだったりコメントを求められると、まず自分のことじゃなく周りに対する感謝だったり、気遣いが出てくる。これはラグビーならではなのかなと思う。自分がタックルされて痛かったらタックルしたほうも痛い。互いの痛みを分かち合うというのがラグビー独特のメンタリティであり、そこからのコメントだと思う」
廣瀬 「選手はゲーム中に主体的に意思決定しないといけないシーンが多々あるので、その時にどういう過程を経て、どんなことをやってきたのかと考える機会がすごく多いのが、1つの特徴かなと思っています。他の球技、スポーツだと、割とトップダウンで監督が言っていたことをやり抜くけれど、ラグビーは自ら考えて、それに対して答えがあって、試合中どうやって適応していこうかと常に考えている。そこの中で言語化というか、頭が整理されていくということがあるのかなと思っていて、それは(司令塔役の)SOだからというだけじゃなくて、ラインアウトにはラインアウトリーダーがいて、その人はその人で考え、ミーティングで(仲間に)伝えていこうとしている。そういったリーダーが生まれやすいスポーツだと思います」
大野 「エディージャパンの時は、完全にトップダウンでね(笑)」
廣瀬 「最初はね」
大野 「ヒーヒー言いながらやっていたけど、でもその先にワールドカップで勝つことを経験させてもらった。それをリーチ(・マイケル/BL東京)だったり、フミ(田中史朗/NECグリーンロケッツ東葛)だったり、田村優(横浜キヤノンイーグルス)が、15年からの4年間で、今度は自分たちで自主的にハードワークして2019年のベスト8に繋がっている」
廣瀬 「みんな自分の言葉を持っているのがいいですよね。伝え方は人それぞれだけど、こんなことを大事にしていると言えることがラグビー選手の強みというか、いいところだと思うね。そして、本当に素晴らしい選手たちが海外から日本に来てくれて、いろいろなことを教えてくれた。エディーさんのようなコーチもそうですけど、そういう人たちと日常的に触れ合うことで、磨かれていったものがあるのかな。(日本代表でも)日本人は、最初はミーティングとかでも黙っていてイエスしか言わない。ミーティングが終わってから、みんなぶつぶつ言っていたけれど、それがエディージャパンの活動の中で対話できるようになったし、議論できるようになった」
大野 「トシがキャプテンになって、若手の意見を求めるリーダーがいてくれたことで、みんな言い出した。その時の若手が今のジャパンの中心になっているし、そこの礎を作ってくれたと思う」
廣瀬 「均ちゃんのように、下で支えてくれる人がいたからね。何かあったら、ちょっと飲みに行ってね。ま、頑張ろうやと言ってくれた。そういう役割分担が良かったかな」
そして対談は、現役時代の思い出話からこれからのチーム、そしてリーグへの期待と可能性へと進んでいく。
(後編へ続く)
■廣瀬 俊朗 / Toshiaki Hirose
1981年10月17日生まれ。大阪府出身。5歳からラグビーを始め、北野高(大阪)、慶大を経て、東芝入り。2007年日本代表初選出。主将も務め、キャップ数28。16年に現役引退後、ビジネス・ブレークスルー大学大学院で経営管理修士(MBA)取得。現在は株式会社HiRAKU代表取締役として、ラグビーにとどまらずスポーツの普及、教育、食、健康に重点を置いた様々なプロジェクトに取り組む。
■大野 均 / Hitoshi Oono
1978年5月6日生まれ、福島県出身。小学生時代から野球を続け、日大進学後にラグビー選手としてのキャリアをスタート。身長192センチの恵まれた体躯を武器に頭角を現すと、卒業後は東芝府中ラグビー部(現・東芝ブレイブルーパス東京)に加入した。日本代表にも2004年から選出され、通算キャップ数「98」は歴代最多。W杯にも07年から3大会連続で出場している。20年に現役を引退し、現在は東芝ブレイブルーパス東京のアンバサダーを務めている。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)