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植草歩、“嘘”から五輪に懸けた8年間 抱き続けた危機感「前の空手界に戻ってしまう」

憧れた吉田沙保里を目指す戦い「自分が空手界を盛り上げるきっかけに」

 吉田沙保里に憧れた。女子レスリングがマイナーだった頃から、伊調馨らと勝ち続けたパイオニア。その姿を見て競技を始めた子たちがいる。「道を切り拓いた人。自分もそうなりたい」。メディアの企画で吉田と対談。「誰に対してもすごく親切な方。やっぱり強い人間は優しい人間なんだな」。何事もポジティブに捉え、周りを巻き込んで事をなす姿に尊敬の念を抱いた。

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 15年9月、空手は五輪種目に正式決定。スポンサーがつき、メディアやイベント出演も増えた。全ては空手に目を向けてもらうため。街や大会会場で声を掛けられ、写真やサインを求められるようにもなった。一つひとつに対応するのが難しい時でも、一期一会の機会を大切にした。

「自分にとっては何回もある中の一回だけど、その人にとっては一生に一回かもしれない。顔は疲れているかもしれないですけどね(笑)。でも、明るく対応して、もっと寛大な人間になりたいです。だって、前の空手界だとそんなのありえなかったから。どんな繋がりでもいいから、空手をもっと多くの人に知ってもらいたい。自分が空手界を盛り上げるきっかけになれば」

「東京五輪で金メダルを獲る」。嘘偽りなく、心の底から言えるようになった。16年世界選手権で初優勝。No.1を目指し、大事な試合の時には髪やネイルを金色に染める。身近な小物類を金色にした時もあった。

 東京五輪へ邁進する日々。だが、順風満帆とはいかない。連覇のかかった18年世界選手権は決勝で敗戦。「どうしよう……2位じゃ帰れない」。涙を拭い、注目され始めた頃の記事をふと読み返してみた。

「昔は早く引退して、結婚したいと言っていた。世界選手権で負けてから『優勝できるならそんなのいらない』と思うようになりました。五輪で優勝するためなら、そんなことはどうでもいい。悔しさもあったし、そんなことで感情が乱れるぐらいなら恋愛とかいらない」

 さらなる鞭を打った。最重量級で世界に勝つため、筋力強化は欠かせない。SNSに筋トレや猛ダッシュの動画をアップしてきた。トップ選手がどんな練習をしているのか、後輩たちに知る機会を作るためでもある。「足太いな」とイジられた時には「昔は恥ずかしかったけど、今は『だって鍛えているもん』と思ってます。『綺麗でしょ?』って。トレーニングの成果が出ていて嬉しいなと思えますね」と胸を張れる。

 19年の正月、空手を始めた道場へ足を運んだ。幼い頃の写真も飾ってある原点の場所。世界女王じゃなくなっても、館長と子供たちは喜んでくれた。「たくさんの人に応援とサポートをしてもらっている。オフは与えてもらったものを返す時期」。現役ながら母校の千葉・日体大柏高でコーチを務め、後進の育成にも積極的に汗を流す。拠点を置く帝京大でも後輩たちに背中を見せた。

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