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植草歩、“嘘”から五輪に懸けた8年間 抱き続けた危機感「前の空手界に戻ってしまう」

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は編集部記者が送るコラム。新種目の空手では、女子組手61キロ超級の植草歩(JAL)が予選敗退に終わった。“嘘”をきっかけに目指した東京五輪までの道のり。目標の金メダル獲得はならなかったが、空手界の顔として後輩たちに確かな道筋を作った8年間だった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

植草歩は女子組手61キロ超級に出場し、予選敗退に終わった【写真:Getty Images】
植草歩は女子組手61キロ超級に出場し、予選敗退に終わった【写真:Getty Images】

「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#86

「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は編集部記者が送るコラム。新種目の空手では、女子組手61キロ超級の植草歩(JAL)が予選敗退に終わった。“嘘”をきっかけに目指した東京五輪までの道のり。目標の金メダル獲得はならなかったが、空手界の顔として後輩たちに確かな道筋を作った8年間だった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 後輩たちのために、いつもこれが原動力だった。

 空手が五輪競技となった2015年より随分と前。少女時代の植草は空手に夢中だった。ただ、学年が上がるごとに女子の人数は減っていく。「習い事は何やってるの?」と聞かれ、「空手!」と答えても「ふ~ん」。反応が鈍く、空手部のない学校も多い。

「目指すものがないから辞めてしまう人もいる。寂しかったですね。いろいろ言われることもあって。それが一番ショックでした」

 何気ない言葉でも、忘れられないものはいくつもある。

「空手って、やっぱマイナーじゃん」
「板を割るやつでしょ?」
「テニス部に入るわ。空手って五輪種目じゃないからさ」

 自身は中学生くらいから千葉県内で勝ち上がるようになり、「自分が活躍できる場所はここだ」と当たり前のように高校でも続けた。しかし、当時は社会人で続けられる環境は乏しく、大学卒業後は引退するつもりだった。22歳で引退、学校の先生になって結婚。そんな人生設計を描いていた。

“普通”の道を行こうとした途中、空手界は20年五輪の正式種目入りへと舵を切った。13年、満を持して開いた記者会見。大学3年の植草は「未来の金メダル候補」として呼ばれた。機運を高めるため、周囲にお願いされたのは「五輪で金メダル」を宣言すること。植草は“嘘”をついた。

「あの時は『(五輪種目になっても)本当は出ないし。そんなに空手やってないよ』と思っていた。その時に『言ってね』って頼まれて。『夢の舞台で優勝します』と言ったことが、次の日に新聞の一面になっていた。それで空手を続けなきゃいけないというふうになったんです。けど、本当に軽く言ったあの一言で人生が変わった。空手を続けるという決意になりました」

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