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ESPNが「こんな世界があるとは」と驚き ある日本人監督が“甲子園映画”を作った理由

撮影に励む山崎監督(左) 球児を追った素材は300時間を超えた【写真提供:Cineric Creative / NHK / NHK Enterprises】
撮影に励む山崎監督(左) 球児を追った素材は300時間を超えた【写真提供:Cineric Creative / NHK / NHK Enterprises】

東京で高校野球に感じた「日本社会の縮図」とは

 高校を卒業し、映画監督の夢を叶えるために渡米。大学で映画制作を学び、ニューヨークで計9年を過ごした山崎さんだが、日本在住時から度々悩まされたことがあった。

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「日本にいた時は、日本人に見てもらえなくて嫌な思いをしたりとか、逆に米国に行くと米国人じゃない。与えられた試練に対して『外国人だから、というのもあるのかな』って考えてしまったりしていました」

 ビザの問題にも苦心していた大学卒業直後の2012年、気持ちを晴らしてくれたのが、ヤンキースにトレード移籍してきたイチロー氏だった。7月、山崎さんも現地観戦した、新天地で初のホームゲーム。ニューヨーカーは総立ちとなり、拍手で日本のレジェンドを祝福していた。

「自分のことじゃないのに涙が出てきたんですね。米国という場所に完全に受け入れられるに値することを自分がまだできていないタイミングだったので、それもあって。活躍できれば、言い訳にしていた部分って関係なくなるんだなって、勇気をもらいました」

 異国で認められているイチロー氏の姿に刺激を受け、ドキュメンタリー制作に励んできた。引退に際しては、ファンや関係者の物語を取り上げた「#dearICHIRO」を作り上げた。

 そんな山崎さんが高校野球に着目したのは2017年夏。日本と海外の懸け橋になれるような作品を輩出すべく、東京にも拠点を作り、日本のストーリーを伝えられる題材を探していた時だった。

 居酒屋、街頭のスクリーン、打ち合わせ先……至る場所で甲子園の映像が流れていた。久々に過ごす母国の夏。歓喜と涙の情景に懐かしさを感じるとともに、日本社会の特徴が凝縮されていると考えた。

「高校野球ではチームのためにとか、整理整頓、時間厳守とか、日本人らしい生き方が映し出されていました。しかも、社会で働き方改革とかが議論になっているように、高校野球にも変化がある。日本独自の文化を紹介できつつ、変化に対しての現場の人たちの葛藤やドラマが撮れるんじゃないかなと思ったのがきっかけです」

 古き良き教えもある中で、変えていかなければならない課題もある。高校野球は、まさに「日本社会の縮図」であり、「究極の日本文化」だった。

「もっと複雑で、情熱的で、感情的な日本人の姿というか、シンプルではない違う面もあるというのを見てもらいたかったんです」。職人気質で、勤勉で、物静かというのが、よくある日本人像。イメージと違う熱い文化と人間味を、球児たちの姿を通じて海外に伝えたい。秋に入り、さっそくプロジェクトが始動した。

 作品では、エンゼルス大谷翔平、マリナーズ菊池雄星らを輩出した岩手・花巻東と、特に野球が盛んな神奈川から横浜隼人をメインに密着。神奈川県内に家を借り、2018年3月から撮影を開始した。各地に赴き、気付けば素材は300時間を超えた。酷暑の中でも朝練から日が暮れるまで、球児らを追いかけ続けた。

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