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総工費35億円の複合施設 パナソニックの熊谷移転が示す新たなチームの“在り方”

悩みの種はアクセスの悪さ、恒常的に人を集められるのか

 TLに代わり2022年1月の開幕を目標に準備を進める新リーグでは、参入希望チームに従来以上に地域に根差した運営や事業性を求めている。具体的には、ホームスタジアムと指定される施設での公式戦開催をはじめ、アカデミー部門の強化や地元住民への普及活動などだ。

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 このような新リーグの理念は、企業を母体に運営されてきた多くの国内チームにとっては大きな挑戦であり課題になる。所属企業のコンプライアンスや経営・運営方針による制約がある一方で、熊谷のようにホームゲームを開催する競技場が公共の場合には、使用における商業活動などにも多くの制約がある。その中で、今回のパナソニックの移転に伴う自治体との借款提携や、事業委託、チーム施設の運用方法などは先進的なアイデアであり、飯島GMも「行政の垣根を越えて共生していく架け橋になりたい」と新しいチーム運営のモデルだと考えている。全く同じ形態は不可能でも、今回の企業と自治体の提携は多くのチームにとって先例となるだろう。

 本格的な移転工事が始まる一方で、残された課題もある。熊谷市は古豪・熊谷工高を始めラグビーが盛んにプレーされてきた地域で、自ら「ラグビー・タウン」と名乗る自治体だ。しかし、JR熊谷駅から約5キロの田園地帯に建つ熊谷ラグビー場へのアクセスは劣悪だ。年配者や子連れでは歩くのは勧められない距離で、公共交通機関も試合日の臨時バスなどを含めても利便性は低い。車社会の北関東圏にあるため、地域外から電車などを使って来場するファンにはアクセスの悪さが悩みの種だ。

 2008年に熊谷で行われた早大―関東学院大の大学選手権1回戦は、当時毎年のように覇権を争っていた人気チームの直接対決で、東京・秩父宮ラグビー場ならチケットが完売するような注目カードだったが、熊谷ラグビー場に集まった観客は8000人台にとどまった。

 昨年の改修後は、2万4000人の収容力に対してW杯前の日本代表―南アフリカ代表戦に2万2258人、TL開幕のパナソニック―クボタ・スピアーズ戦に1万7722人と順調な集客を収めている。しかし、関心が移ろい易い国民性を考えても“新装”だけで数年後まで観客を集めるのは難しい。都市部のスタジアムであっても、試合以外の目的で競技場ないしその周辺に人が足を運ぶ具体的な理由がなければ、恒常的に多くの人を集めるのは難しい。

 パナソニックというトップ企業が乗り込んできたことだけでは、集客問題は解決しない。熊谷ラグビー場に人が集まるための付加価値や魅力をどう創り出すかは、これからチーム、自治体、協会が連携しながら考え、取り組む宿題になる。

 移転が正式に決まったことが自治体やチームにとってのゴールではなくスタートラインと考えるべきだが、この提携が多くの企業チームにとっての“叩き台”になることを期待したい。TL参画チームの中でもプロ化推進のトップランナーであるパナソニックと全く同じことを目指す必要はないが、企業スポーツという範疇の中でも、公共施設の使用や地域も巻き込んだチーム運営という観点では、吸収するべき要素が多分にあるのが今回の移転・提携だ。パナソニックとワイルドナイツが踏み出した1歩を、選手とファンにとって、より多くの恩恵がある進化に繋げるためには、多くのチームが自分たちの歩幅に合った変革、外部組織との連携を模索することが必要だろう。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19年と6大会連続で取材。

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