【今、伝えたいこと】指導者は「上機嫌であれ」 女子バスケ大神雄子の哲学「人間は葛藤して生きている」
「人間みたいな生き物はポジティブな部分もネガティブな部分も絶対にある」
コーチング哲学に掲げる「上機嫌であれ」を体現するかのうように、明るく前向きな雰囲気と活気溢れる声で話す大神氏だが、「若い時は感情にムラがあったり、喜怒哀楽という部分で結構ネガティブに捉えることも、正直ありました」と明かす。考え方に変化が生まれたのは「海外に挑戦するようになってからですね」という。
最初の海外経験は、日本女子として初めてプロ契約を結んだ2007年シーズン終了後に渡ったアメリカだった。かつて日本人初のWNBAプレーヤー、萩原美樹子が所属したフェニックスとキャンプ参加契約を結んだ時だった。
「海外に行ったことで刺激を受けることも、逆に日本の良さを知ることもありました。ただ、言葉や文化が違うし、食べているものも違う。そんな環境の中にいると、自分のパフォーマンスが悪くて迷っても、そんなことは世界にいる何十億の人は誰も知らないんだろうな、と思えてくるんです。そうすると、だんだん自分の悩みがちっぽけな問題だと捉えられるようになってきました。
人間みたいな生き物はポジティブな部分もネガティブな部分も絶対にあって、葛藤しながら生きていると思います。でも、どうせ一つの事柄を捉えるなら、楽しいポジティブなマインドを持った方がいい。それは自分にとってもそうですし、周りの人に対してもそうです。やっぱりネガティブな発言をすればするほど、周りが悲しい気持ちになるのは自分自身でも分かること。だからこそ、大きく楽観的に捉えることで、自分自身も前に進もうと思えるし、周りの人にもいい影響を与えられる。特に選手はそういうポジションにいるんじゃないかと思います」
誰しもが新型コロナウイルスの影響を大なり小なり受ける今、「STAY HOME」を実践する人々もまた、「捉え方一つで全く違う結果にもなるし、全く違う時間の過ごし方になるのかなと思います」。だが、その前に「とにかく手洗いとうがいですよ。自分で自分の身を守ることが、これからスポーツができることに繋がる。そこはバスケットボール選手とかバスケットボール指導者とかいう枠を超えて、一人の人間として伝えたい一番基本的なところです」と言い切る。
誰も経験したことにない不安定な日々が続くが、こんな時だからこそスポーツの持つ力が発揮されるとも信じている。
「スポーツの力は、現役中も常に感じていましたし、自分のモチベーションになっていたことも事実です。やっぱりバスケで日本を元気に、スポーツの力でみんなを明るくしていきたい。世界全部を変えることや、日本全部を変えることはできませんが、身近にいる人たち、身近でバスケットを頑張る選手、Wリーグや日本代表を目指している選手に、少しでも元気を伝えていけたらと思います」
笑いや笑顔は人間の心身を健康にする効果があると言われている。『上機嫌であれ』というコーチング哲学に基づくポジティブ思考の波が少しでも多くの人に届くように、大神氏は精力的に活動を続ける。
■大神 雄子(おおが・ゆうこ)
1982年10月17日生まれ、山形県出身。バスケ指導者の父がコーチ留学したロサンゼルスで本場NBAに触れ、プレーを始める。山形から愛知の強豪・名古屋短期大学付高(現・桜花学園高)に進学、3年間で7度の日本一となった。2001年にジャパンエナジーJOMOサンフラワーズ(現JX-ENEOS)に入団。2007年に日本人初のプロ契約選手となると、シーズン終了後に米WNBAのフェニックス・マーキュリーのキャンプに参加。開幕ロースターを獲得し、日本人2人目のWNBAプレーヤーとなる。2008シーズンから再びJOMOに戻ると、2013年に退団するまで9度のWリーグ優勝、7度の全日本総合選手権優勝に貢献。同年、中国女子リーグの山西興瑞に移籍し、主力として優勝を経験した。2015年にトヨタ自動車アンテロープスに入団。2018年に引退後は、トヨタ自動車でコーチとして指導にあたる。
オンラインサロン 大神雄子のバスケットボール研究所(https://shin01.work)
YouTubeチャンネル 【大神雄子】SHIN TV(https://www.youtube.com/channel/UCI7N9NEWOQqING_5maxzlcQ)
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)