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高校の部活指導で感じた“モヤモヤ” 元Jリーガー森山泰行、53歳で学ぶ選手主体の理論

順天堂大サッカー部の先輩である畑喜美夫氏(左)の下で養成講座を受けて合格した
順天堂大サッカー部の先輩である畑喜美夫氏(左)の下で養成講座を受けて合格した

教育方法への疑問と反省、辿り着いた畑喜美夫氏の理論

 サッカーの指導法というよりも、教育方法への疑問だった。「彼らは俺じゃないし、自分がやってきたことをしても成功するとは限らない。子供たちが得意なことや興味があることは十人十色。そんないろいろな才能を引き出さないといけない。One to Oneで向き合って彼らの良さを引き出すための信頼関係も作らなくちゃいけない。自分の経験を伝えたいという気持ちが強すぎて、彼らの可能性を信じていなかった」という反省もあった。

 周囲からは、もっと厳しく指導したほうがいいのではないか、というアドバイスもあったという。だが、それは違うと考え、監督3年目にコーチと共有する指導方針をまとめた。ビジネスの世界で活躍する知人にも相談して作った方針は「ボスは恐怖を吹き込む、リーダーは熱意を吹き込む」「上下関係でなく、仲間意識を持つ」「徹底して相手の立場に立つ」「より大切なことは日々のコミュニケーション」「正解がないので、失敗を恐れず、チャレンジを続けること」など、高圧的なトップダウンの練習とは対照的なトレーニング環境を目指すものだった。

 5年目で契約終了となったが、全国の学校や企業などでのハラスメントの事例は報道などで次々と伝わってくる。噂として聞く身近な学校での話からも、減点主義と思われる環境の中で子供たちが窮屈そうにしている雰囲気が伝わってくる。思い立って今年6月、ボトムアップ理論を提唱する畑喜美夫氏に会うため、広島市を訪れた。

 畑氏は、森山氏の母校・順天堂大のサッカー部の4年先輩だ。ボトムアップ理論は、畑氏が監督を務めていた県立広島観音高が2006年のインターハイで優勝し、普通の公立高サッカー部を日本一に導いたとして注目され始めた。原点は、畑氏が小学生の時に通った広島大河フットボールクラブの創設者、浜本敏勝氏から受けた指導だ。コーチが高圧的に教え込むトップダウンとは違い、選手が自ら考えることを重視する。クラブからは木村和司氏、森島寛晃氏、田坂和昭氏ら日本代表やJリーガーも育っている。

 畑氏は静岡・東海大一高(現・東海大静岡翔洋高)、順天堂大に進んで年代別日本代表にも選ばれ、故郷・広島で公立高校の教員になり、1997年に広島観音高へ赴任した。広島大河FCなどでの経験やビジネス分野で学んだ知識などから、ボトムアップ理論に辿り着いたという。

 主体性を引き出すために練習内容やメンバー選考などを選手に任せ、量より質を重視した週2、3回の練習などを実践。同高は2004年全国高校サッカー選手権16強、翌年は8強で、2006年インターハイで日本一になった。その後、ボトムアップ理論を学んで部活動などに取り入れる学校も増え、企業からも習得の希望が寄せられている。2019年に教員をやめ、理論の普及や人財育成、組織づくりの支援などに取り組んでいる。

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