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「箱根駅伝の捉え方も変わってきている」 東洋大・酒井俊幸監督が大切にし続ける“その先”の世界

特筆すべき卒業生のさらなる成長

 全体的な競技レベルの高まりを歓迎し、自分たちもさらなる高みを目指しているが、酒井監督の基本姿勢は「学生生活の中で最大限できることを行うこと」。これは就任当初から変わっていないという。

「選手の入れ替わりは毎年あるわけですから、その年の選手個々のベストを引き出せるよう、時々の変化に対応しながら1年1年の積み重ねを大切にしています。その過程で才能ある選手たちにも巡り合い、気づけば11年連続総合3位以内になっていたという感じです。将来的に世界を目指せるものを持っている選手にはその部分を個別に意識付けしますが、あくまで教育の一環ですので、授業を受ける、日常生活をしっかりする、その上で競技に集中することが基本です。これは、東洋大学が伝統的に大切にしてきた部分でもあります」

 特筆すべきは、その指導スタイルが駅伝の成績のみならず、卒業生のさらなる成長に影響を与えている点だ。

 過去10年の卒業生で見ると、元マラソン日本記録保持者の設楽悠太(2014年卒/現・西鉄)をはじめ、東京五輪マラソン代表の服部勇馬(2016年卒/現・トヨタ自動車)、1万メートルの東京五輪代表であり日本記録保持者の相澤晃(2020年卒/現・旭化成)、今年のブダペスト世界陸上選手権マラソン代表の西山和弥(2021年卒/現・トヨタ自動車)らは箱根路を沸かせた選手として、未だファンの記憶には新しい。彼らは在学中から将来の「世界」を意識して競技に取り組んでおり、服部、相澤は学生時代に学んだ「自分で考える習慣」を卒業後も継続して成長できた理由として挙げたことがある。

 さらに言えば、酒井監督が長距離選手たちとともに指導してきた競歩勢では、2012年ロンドン五輪から3大会連続で現役学生が五輪代表権を獲得。2018年から高校で指導経験のあった瑞穂が競歩コーチになると、東京五輪では20キロ競歩の池田向希(旭化成)が銀メダル、世界陸上選手権の35キロ競歩では川野将虎(旭化成)が2022年2位、23年3位と連続メダルを獲得している。

 世界の舞台に立つ卒業生たちの存在は、自然と在学生たちのモチベーションに直結する。そして監督としても彼らからフィードバックを受けることで、より「世界」を意識した学生指導に活かすことができる。そうした循環は、箱根駅伝のテーマである「箱根から世界へ」を地で行く好例ともいえる。

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牧野 豊

1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「NBA新世紀」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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