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プロ内定9人は早稲田史上初 元Jリーガーが貫いた「監督らしくない監督になる」信念

選手が主体的に考えて最適解を生み出す流れを促す

「監督らしくない監督になりたい」

 外池は、そう思って新しい挑戦に乗り出した。それは旧い常識を塗り替え、時代のニーズに即してスポーツへの認識や価値を高めていくための挑戦だったに違いない。

「こういう戦い方で勝つんだよ、と決めて、それを評価するだけの監督にはなりたくなかった。だからあくまでア式蹴球部は、4年生を中心とした運営メンバーたちに預けて、彼らに託した裁量は上手くいかない時でも僕に戻ってこないようにしました。その点で自分のやり方は貫けたと思いますし、大学生活の大半をコロナ禍で過ごした4年生は、その状況下でも個々のテーマを見つけ出し向き合ってきた。それをチーム力にはコミットできなかったかもしれませんが、一定の成果はあったと確信しています」

 早大ア式蹴球部には、様々な道を歩んできた選手たちが集結してくる。多くのJユース出身者に混じって、高校チャンピオンの青森山田から入学してくる選手もいれば、外池自身がそうだったように、全国大会とは無縁の早稲田実業から門戸を叩く者もいる。

「柏レイソルやガンバ大阪出身の選手は、4年間ユース時代のユニフォームを着て過ごすんですよ。それだけそこで培われたサッカーに固執し、アイデンティティを失いたくない気持ちが強い。でも柏にいた自分をどうアップデートして磨き上げていくか。本来適うわけがないものを適わせていくのは、社会に出ても求められることで、それをイメージさせるのが僕の仕事だと思っています」

 2022年度のチームも、柏、G大阪、川崎フロンターレ、早実などの出身選手たちが侃々諤々の激論を繰り返したという。

「例えば、そこで監督が『絶対にレイソル主義を貫くことが正解じゃない』と落とし込むのは簡単です。でも彼らが主体的に考えて最適解を生み出していかないと本物にはならない」

 結局早大は、多様な選手たちが融合した強さを表現し切れなかった。しかし反面、もがき苦しみながら戦ってきた蓄積が、スカウトたちの「(高校時代と)変わったな」という評価を引き出し、9人の選手たちが次のステージへと進むチャンスを得た。

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外池 大亮

早稲田大学ア式蹴球部・前監督 
1975年1月29日生まれ。神奈川県横浜市出身。早稲田大を経て97年にベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)に加入。2000年に横浜F・マリノスに移籍すると、その後は大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、サンフレッチェ広島、モンテディオ山形を渡り歩き、06年に湘南へ復帰。J1通算82試合16得点、J2通算101試合13得点の成績を残し、07年シーズン限りでスパイクを脱いだ。現役引退後は広告代理店の電通を経て、現職でもあるスカパー!に入社。18年から22年まで、早稲田大学ア式蹴球部の監督を務めた。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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