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日本人がスペインで苦戦する理由 現地指導者が指摘、小学生年代の「戦術指導の欠如」

戦術に対する理解が重要だと語る吉住貴士氏【写真:編集部】
戦術に対する理解が重要だと語る吉住貴士氏【写真:編集部】

相手との駆け引きを「育成年代から学ばせなければいけない」

吉住「スペインは戦術が凄く整理されていて、選手の理解度が高いんです。僕の指導者養成講座の先生が、ヒムナスティック・タラゴナの関係者で『鈴木(大輔/現・浦和レッズ)を知っているか?』と声をかけられたので、評価を聞いてみたんです。『足も速い。身体もヘディングも強くて良いディフェンダーだ』と誉めていましたが、反面『この選手を押さえろというタスクは忠実にこなす。でもマンマークを外してでもカバーに行かなければいけない局面で、そこにいない』とのことでした。スペインでは12歳以下で身につけていて、みんなできると話していました。つまり、それを知っているかどうかで違ってしまう。

 高校選手権を見ていても、素晴らしい対応を見せた選手が、次に同じ状況では全然違う選択をしてしまうことがあります。要するに最初のシーンでは、自然にできてしまっただけで、理解をしているわけではないから再現性はない。ただし逆にできるポテンシャルは持っている。あとは知識を持つ指導者がいれば身についていくはずです」

リノ「小学生年代のクラブが集まるワールドチャレンジ決勝で、バルセロナが1-0で大宮アルディージャを下した。バルサは終始自分たちのリズムでプレーし、相手を疲れさせていた。相手を疲れさせる。それもサッカーだ。僕も対戦相手に素晴らしい選手がいた時に、マンマークをつけたら凄く嫌がり交代になった。こうした駆け引きを育成年代から学ばせなければいけない。

 トレーニングの時に、3バックから4バックへの移行などは『山』『川』など、サッカー以外の言葉で伝わるようにしておく。それもなしに、いきなり試合でシステムを変更しようとしても無理な話だ。一方でこうした準備をしておけば、選手たちも『相手が3トップの時は5バックが守り易かったな』などと引き出しが広がっていく」(文中敬称略)

(最終回へ続く)

[指導者プロフィール]

■リノ・ロベルト
1972年4月26日生まれ。UEFA(欧州サッカー連盟)スペイン連盟の指導者資格を持ち、2002年からアトレチコ・マドリードでカンテラの指導に携わり、2017年に来日。埼玉県のジュニアユースチームでU-15監督を務めた。スペイン連盟からは、主に指導者対象の戦略セミナーを任された。今年から「ファーダンサッカースクール」のプロ育成クラスのメインコーチを務めている。

■吉住貴士
1986年12月8日生まれ。国見高校時代に全国制覇し、鹿屋体育大学では主将を務める。大学卒業後は長崎総合科学大学附属高校のコーチを6年間務めたが、その後スペインに渡り現地のチームで4年間指導。現在はRCDエスパニョールジャパンアカデミーの責任者。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

▼自社サイトのみの告知文▼
[セレクション開催]
今回の対談に登場したリノ・ロベルト氏がコーチを務める「Professional Training Center(プロトレセン)」が、小学新2年生(U-8)、小学新3年生(U-9)を対象に選考会を開催する。詳細や応募方法は下記URLへ。
https://note.mu/jpn_academy2019/n/n5d27de4a386d

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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