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豪雨災害時の教え子の行動に感銘 ボトムアップ理論で部活改革、“伝道師”の新たな挑戦

生徒たちが自主的に「大人より先に災害地へ支援に出かけた」

 そんな多忙を極める畑氏が相生学院からのオファーを受けたのは、上船総監督の熱い想いと大きな世界観に共感したからだった。

「チームを強くするだけではなく、素晴らしい選手であると同時に、将来社会で必要とされる“人財”を育てていく。ダブルゴールを目指そうという発想です」

 畑氏は広島観音、安芸南と2つの高校でサッカー部の監督経験を持つが、一切の強要もなく生徒たちが自ら率先行動をしていくことを促し著しい成果を挙げた。とりわけ安芸南での生徒たちの自主的な行動には、自身も大きな感銘を受けたという。

 4年前の夏、西日本で多くの地域が豪雨に見舞われ、広島県も甚大な被害を受けた。

「すると生徒たちが自主的にLINEで連絡を取り合い100人ほど集まってグループ分けをすると、大人より先に災害地へ支援に出かけたんです。海外メディアから取材を受けた生徒たちは『いつも自分たちで考えて行動をしているので、当たり前のことをしただけです』と答えました。記事はヤフーニュースに載り、学校には感謝の声や取材依頼が集まり、地元からは『なぜ高校生たちが大人より先に行動できたのか話してほしい』と依頼を受けました。サッカーの勝ち負け以上に嬉しい出来事でした」

 上船総監督が描くのも、相生学院が率先し愛される存在になることで、淡路をゴミ一つ落ちていないような美しい島へ変えていく未来である。

「畑さんが導いた整理整頓は素晴らしく感動しました。もし相生学院サッカー部から素晴らしい選手たちが育ち、彼らが綺麗な整理整頓をし続ければ、小中学生も真似をするようになり、島の文化を変えられるかもしれない」

 子供たちがゴミを拾えば、大人もポイ捨てをするのが恥ずかしくなる。そして淡路島を美しく変貌させた発信源が相生学院なら、誰もが誇りに思い応援をしたくなるはずだ。

「通信制でも、いや通信制だからこそ、こんなことができる。それを発信していきたい」

 総監督のそんな熱意が、畑氏を動かした。

(第2回へ続く)

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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