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為末大「努力は夢中に決してかなわない」 選手を競技に没頭させる指導のヒント

ジュニアの競技選びは自分の価値観を大切に

 私は姉について陸上部に入ったので、いわば偶然で始めた競技です。その後、100メートル走の選手になり、400メートルハードルへ切り替えたのは18歳のとき。振り返ってみると、自分にとって大きな決断でした。「自分に向いている競技」を決めるためには、前回のコラムでお話しした「自分にとっての幸せ」の定義が基準になります。好きだから勝てなくても幸せなのか、そこまで好きではないけど、勝つのは自分にとって幸せなのかを自身で考えて決めることになります。

 勝つことが全てだと決めたとします。勝つことを目的にすると、身体的特徴から選び、最適なトレーニングを探していけば、より活躍できる競技が見つかる可能性が高い。一方で自分の好きなことから探すと、自分に合っているかどうかがよく分からないという問題が生じます。私の経験則からですが、世の中の大多数は「勝つ」のが好きだと仮定すると、身体的特徴から探すのがいいということになります。背が高いのであれば、バレーボールやバスケットボールにチャレンジしてみるというのが分かりやすいでしょうか。

 ただ、中学生や高校生の時点で競技をひとつに絞るのは酷なことです。「何が幸せか」と聞かれても分からないでしょうから、いろいろなスポーツをすることで見つけるのが理想です。私自身、好きなこと、勝つことのどちらが自分にとって大事なのかを18歳のときに問いました。100メートル走の競争は厳しいので、400メートルハードルなら勝てると思い選びました。どこを主戦場にするのかを決めることで、その後の人生は変わりました。競技選びはサイコロの目のようなもの。トップアスリートでも自分で選んだという人はほとんどいません。家族がそのスポーツをしていて5、6歳から始めて、ハマっていき、勝つのが楽しくなったという人がほとんどです。それほど自分に合った競技を選ぶのは難しいのです。

※「ドーピング」 スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為を指す。

(記事提供TORCH、第4回に続く)
https://torch-sports.jp/

■為末 大 / 為末大学学長

 1978年生まれ、広島県出身。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者。現在は人間理解のためのプラットフォーム為末大学(Tamesue Academy)の学長、アジアのアスリートを育成・支援する一般社団法人アスリートソサエティの代表理事を務める。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。

(スパイラルワークス・松葉 紀子 / Noriko Matsuba)

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