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かつての弱小サッカー部が掴んだ夢の全国 部員160人を支えた“女子マネ2人の献身”

マネージャーは「嫌われ役」…うるさがれ、ぶつかり、へこんでも全うした2年半

全員合宿の真っ最中、早朝から消灯まで休む間もなく動き続ける【写真:荒川祐史】
全員合宿の真っ最中、早朝から消灯まで休む間もなく動き続ける【写真:荒川祐史】

 一方の大久保さんは、中学まではバレーボール部に所属。「高校でしかできないことをやりたい」とマネージャーを希望。「父には、選手を辞めて後悔しないか? と念を押されました。マネージャーの仕事は大変だけど楽しい。逆に、迷ってここにいなかったら、後悔していたと思います」

 毎年、マネージャー志望の生徒も多いが、サッカー部では1学年1人の採用が基本。入部の際、「生半可な気持ちでは務まらない」と豊島監督から厳しく言われた、と振り返る。

「友達からも『男子ばかりだし、ユニフォームは汚いしで嫌じゃない?』とか『水用意するとか面倒だよね』とか言われます(笑)。それに、マネージャーって結構、嫌われ役。監督・コーチからの伝達事項を選手に伝える立場なので、うるさがれることも多いんです。人と人なので、ぶつかることもあるし、へこむこともある。でも、自分で希望したことだし、苦に感じたことは一度もありません」(新井さん)

 豊島監督も2人の働きぶりに助けられている、と話す。「彼女たちは選手だけでなく、指導陣の言葉も常に拾っている。例えば、我々の誰かが『○○にコレを伝え忘れたなあ』と言えば、その瞬間に呼びに走っている、という具合です」

 しかし、本人たちは「160人もいると、私たちから情報を拾っていかないと、誰が何をやってほしいかが伝わってこないから」とサラリと返す。「逆に流れがつまずけば、『先にやっておけよ』と思われるのは私たち。だからちょっとでも疑問があればどんどん聞くし、先回りできることは先にやっちゃいます」(新井さん)

 冒頭で触れたように、現3年生は1年生の時から、全国出場を見据えた強化を続けてきた。「絶対に全国に行けるぞ」。豊島監督の言葉に、選手たちの意気も揚がった。

「他の学年は、サッカーが合わなかったり受験だったりと、いろんな理由で退部していく選手がいました。でも、私たちの代は3年になるまで、選手52人、誰ひとり退部しなかった。全員が『絶対に全国に行く』という気持ちに合わせてやってきたので、どの学年よりも団結力だけは強いと思います」(新井さん)

 実際、2年時から『全国』の2文字が現実味を帯びてくる。しかし、昨年は全国高校サッカー選手権大会の予選決勝で、今年の春は関東大会予選ベスト4で敗退。いずれも、「あと1つ勝てば東京代表」という試合で敗れ、関東、そして全国への道を閉ざされた。

 いよいよ迎えた、最後のインターハイ予選。新井さんは「何か御守になるものを」と思い立ち、3年生52人分のユニフォームのマスコットを手作りする。すべてのマスコットには各選手の練習試合用の背番号を入れ、手渡した。

「公式戦の背番号を与えられるのは、一部の選手だけ。でも、練習試合用の背番号は、学年ごとに決まっていて、全員が持っています。自分たちの代で全国大会出場を決めるなら、この背番号じゃないと意味がない、と思って」

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