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陸上部のない高校から生まれた陸上日本一 黒帯から一変、体力づくりで始め「落ちる瞬間」に憑りつかれ――阿南光・井上直哉

陸上部のない阿南光に進んだことが井上の転機になった【写真:奥井隆史】
陸上部のない阿南光に進んだことが井上の転機になった【写真:奥井隆史】

転機は高校進学 恩師にダメ元で「まだ棒高跳びをやりたいので…」

 株木正彦コーチの指導もあってメキメキと頭角を現し、3年生で全中5位に入賞した。

 転機は高校進学。

 県北部の強豪校から誘いがあったが、県南部の阿南から通うには遠い。しかし、棒高跳びの設備がある高校も近くにない。

「まだ棒高跳びをやりたいので、羽ノ浦中で練習をさせてもらえませんか?」

 ダメ元で株木コーチに頼んだら、受け入れてくれた。

 それをきっかけに近所の阿南光に進学。学校には陸上部すらなかった。授業を終えるとクラスメートと別れ、自転車で20分かけて中学へ向かう。恩師との二人三脚は変わらず、6年間の歳月を過ごしてきた。

 だから、集大成となる最後の夏に恩返しがしたかった。

 インターハイは、1年生は予選落ち。飛躍を期した2年生は5位に終わり、悔しさを募らせた。昨年は秋の国民スポーツ大会で優勝。続くU18大会も制し、今年2月には日本室内大阪大会のU20部門で1位に。

「高校No.1ボウルター」と見られる立場になったが、どうしても欲しかったのが、真の高校日本一を示すインターハイ王者の称号。

 追われる立場になってなお、変化は恐れず、進化を求めてフォームを試行錯誤。「そこは誰にも負けていない」。血のにじむ努力で立った最後のインターハイ。決勝、5メートル00を一発で決めて優勝は確定した。

 しかし、井上が求めていたのは「目標は5メートル30以上を跳んで優勝すること」。

 一気に31センチを上げ、己の限界に挑んだラストジャンプだった。

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