レース転倒で大怪我、指2本骨折&20針縫合 15日後…「心が折れてる場合じゃない」靴紐も結べない手で掴んだ連覇――筑波大・勝くるみ
8日から4日間、神奈川の相模原ギオンスタジアムで行われた陸上の第104回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は女子1部・800メートルで連覇した筑波大の勝(すぐれ)くるみ(3年)。4月の日本学生個人選手権、レース中の転倒で左手に大怪我を負うも、「心は折れていなかった」と強靭なメンタルで今大会に挑み、貫録の走りを見せた。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

陸上・関東インカレで輝いた選手たち 女子1部・800メートル/筑波大・勝くるみ(3年)
8日から4日間、神奈川の相模原ギオンスタジアムで行われた陸上の第104回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は女子1部・800メートルで連覇した筑波大の勝(すぐれ)くるみ(3年)。4月の日本学生個人選手権、レース中の転倒で左手に大怪我を負うも、「心は折れていなかった」と強靭なメンタルで今大会に挑み、貫録の走りを見せた。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)
白く覆われた左手を懸命に振り、手負いの女王が実力を見せつけた。序盤は8人の最後尾に位置づけた勝。2周目のバックストレートで外側から一気に先頭に立つと、後続を引き離してゴールラインを駆け抜けた。「タイムやレース展開は反省が多いレースになってしまったけど、筑波大に8点持ってこられたことが良かった」と清々しく振り返った。
4月26日の日本学生個人選手権、800メートル予選で他の選手と接触し転倒。縁石に左手をついて負傷した。4着で完走するも、そのまま病院に直行し、2時間後には縫合。親指と小指は骨折。手のひらの外側を20針縫う大怪我だった。
関東インカレまでわずか15日。それでも「心は折れていなかった」ときっぱり。「今シーズンは試合の日程が前半に詰まっているので、そんな場合じゃない」。2日間は走れなかったが、バイクやジョグなどで調整し、今大会に照準を合わせた。

包帯はまだぐるぐる巻き。痛々しさが残るが「走るくらいは大丈夫」と言ってのけ、「靴紐を結んでもらったり、ペットボトルも開けてもらったり日常生活の方が大変。色々な人にサポートしてもらってスタートラインに立てた」と感謝する。
試合後には「友達とミスタードーナツを10個食べる」と話す元気いっぱいの21歳。中学1年で陸上競技を始め、白梅学園高(東京)2年時にはU20日本選手権で3位、3年時には国体で5位に入るなど、高校時代から全国で活躍してきた。
全国クラスの選手ながら、勉強と部活の合間を縫って飲食店でホールスタッフのアルバイトとして働く。「多い時で週2日」というバイト代は「友達の誕生日プレゼントを買ったり、親にお礼で何かをあげたり」と心優しさものぞかせる。
次の大舞台は6月に行われる日本インカレ。昨年は4位で、表彰台は関西勢に独占された。「練習でいっぱい刺激を入れて関西勢に負けないように備えたい。優勝を目指して頑張ります、これでも」と笑って左手を見せた勝。強いメンタルで日本一を掴む。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)