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中3でテニス全国V、父の教えで知った「考える」面白さ 人生を懸ける仕事に導いた部活での経験

中学の全国大会決勝での1枚。左側の選手が佐藤友美さん、観客席から指示を送っているのが父の安藤英明氏
中学の全国大会決勝での1枚。左側の選手が佐藤友美さん、観客席から指示を送っているのが父の安藤英明氏

「メタ認知能力」と「考える力」で日本一に

 佐藤さんの父親である安藤英明さんは、全国的に有名なソフトテニスのジュニア指導者だった。

「父の教えていた学校は校内の順位がそのまま全国大会の順位になるほどの強豪で、私の小学生時代にペアを組んでいた選手は、世界選手権で準優勝しています。また父は、ソフトテニス・マガジン(ベースボール・マガジン社発行)で7年ほど指導法の連載をしていました」

 1年の約半分は雪で屋外での練習ができず、日照時間も短い北海道のチームや個人を16回も全国優勝に導いたのは、「72分の1理論」というユニークな指導法だ。「父の指導法はかなり理論的でした。今で言うところの『ID野球』『データバレー』にあたる手法だと思います」と佐藤さんは説明する。

「テニスコートを36分割して、例えばAの3にボールが来た時、シュートボールで打ち返すとミスの確率は何%になるというような統計を取ります。そのデータに基づき、相手がAの3に打ってきた時はシュートボールを使わず、後衛の前にロブを打つか相手を走らせるロブを打つかのどちらかで返球するというように、あらかじめ成功率が高いボールを2つ決めるんです。その上で、使用頻度の高いボールから優先的に練習していきます」

 ミスの少ない選択肢に絞り、練習でさらにその精度を高める。それにより、練習の効率を上げることができる。加えて、試合でもプレーに迷いがなくなり、ますますミスを減らせるという好循環が生まれる。その結果、「負けにくいテニス」になるというわけだ。

 ただし、この理論を成立させるためには、相手のボールの落下地点と球種を見極める力が不可欠になる。「難しいように感じるかもしれませんが、これは訓練さえすれば数日で、誰でもできるようになります。そして、常にコートを上から俯瞰することが習慣になっていたため、私はメタ認知能力がめちゃくちゃ高いんです」と佐藤さんは語る。

「俯瞰できるようになったのは、コート上のボールの位置だけではありません。自分の実力に関しても、客観的に見極めることが得意だと感じます。自分より技術があって、身体能力が高い相手に対しても、7対3くらいの差であれば、戦術でひっくり返すことができることが分かりました。9対1ではどうやっても勝てないですけどね。だから7対3であるということをしっかりと分析できるかどうかのほうが重要で、7対3を5対5と見誤ったら勝てません」

 佐藤さんには、それまで一度も勝てなかった強敵がいた。ジュニアの世界選手権にも出場したことがある選手で、元々2人はペアを組んでいた。佐藤さんが近隣の町に転校したことでペアを解消し、ライバルとなった。中学3年の夏の大会までの対戦成績は0勝7敗。「その年の新人戦でも地区大会、北海道大会で連敗して。全国大会には行くことができたのですが、そこでまたその選手と決勝戦で当たって負けてしまいました」。

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山田 智子

愛知県名古屋市生まれ。公益財団法人日本サッカー協会に勤務し、2011 FIFA女子ワールドカップにも帯同。その後、フリーランスのスポーツライターに転身し、東海地方を中心に、サッカー、バスケットボール、フィギュアスケートなどを題材にしたインタビュー記事の執筆を行う。

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