[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

部活の常識を変える挑戦へ 「クラブ化」推進の教師とラグビー強豪校が運命的出会い

後輩たちに送り出されるアルタイルズのメンバーたち【写真提供:松山吾朗】
後輩たちに送り出されるアルタイルズのメンバーたち【写真提供:松山吾朗】

花園を目指しながら「同じようなリーグを作りたい」

 静岡での挑戦はこれからだが、この1年で平塚を中心に取り組んできた、クラブ化とリーグの立ち上げという活動は、ゴロー先生にとって貴重な成功体験であり財産だ。

「KCリーグのような考え方は、日本中にあってもいいと思います。勝利を追求する花園のトーナメントを並行してやっていいので、静岡でも同じようなリーグを作りたいですね。もともと全試合消化する必要もない。交流試合をちょっと組織立ててやるだけなので、すぐにできるかなと思っています。まず、静岡でいろいろな高校の先生方と知り合いになりたいですね。県内のラグビー部が少ないので、興味があれば愛知からでも神奈川からでもどうぞと考えています。

 聖光と東海大静岡翔洋には、試合に出られない部員がたくさんいる。他は、試合数がなさすぎる合同チーム、もしくは3学年が揃った時だけ試合ができて、1回戦負けの1試合だけが1年間のゲームですというようなチームが多い。そんなチームなら、こちらから選手を貸しますよ、11対11でもいいですよというのがKCリーグでやってきたことですから」

 一見すると、今まで監督をしてきた公立高校と、花園出場7度を誇る私立高校では、大きな違いがあるように思われる。だが、ゴロー先生の経験では変わらないという。

「今までも、勝利はとことん追求してきましたから。少ない練習回数と限られた人材で勝とうとすると、相当に突き詰めないといけない。たとえそれが県大会1、2回戦の挑戦でも、花園を目指すチームでも変わらないです」

 受け入れる聖光学院の中でも、将来的には部活をクラブ化するというアイデアもあるという。このような流れは、中高の部活の将来のあり方として全国的な規模でも検討、検証が始まっている。ゴロー先生は、自分たちの部活の中での問題点、課題などを反映させながらクラブ化という形を作り、近くの有志の教員、監督らと自主的なリーグを立ち上げたが、新しい中高の“部活”も、実は共通する課題、テーマへと動き始めている。

 新たな挑戦をスタートさせたゴロー先生だが、平塚に残してきたチームには、どんな思いを抱いているのか。まず、昨夏からのクラブチームとしての活動で感じた、これからの課題を指摘する。

「クラブメンバーは、平日の活動はほぼ不可能でした。土日の参加が中心で、それも毎週は難しかった。そこで気がかりだったのは重症障害のリスクでした。コンタクト練習も、フィジカルトレーニングも、クラブの子たちはおそらく十分じゃない。一緒にいる時に、できるだけコンタクトフォームをチェックしてあげたり、怪我予防のアドバイスはしてきましたが、ゲームでの怪我は防げないものもある。ここは後任の顧問とも、問題を解決する作戦を一緒に考えようと話しています」

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集