なぜ、サニブラウンは急進化を遂げたのか 9秒5を目指す18歳の「思考のスケール」
レース後の表情に表れたスケールの違い「9秒5を目指す人にとって10秒0台は通過点」
「各選手が彼に惑わされたという印象です。彼が良い記録を出したことによって、彼を意識するあまり、いつもの自分と違う走りになってしまった。そういう結果ではないでしょうか」
一方、伊藤氏とともに「0.01」でJリーガー、プロ野球の現役アスリートを指導する200メートル障害日本最高記録保持者の秋本真吾氏も「9秒台を最初にマークするのはサニブラウン選手が一番と思っていたけど、あんなに早く突き抜けるとは思わなかった。予想以上でした」と舌を巻いた。
特に、注目したのは、レース後のリアクションだった。
「ガッツポーズもないし、笑顔もない。日本選手権の優勝は普通でしかない。彼には最終的に世界記録を出すと会見でも言っていました。あの激戦で過去最高のハイレベルの100メートルの決勝で優勝となれば、『ヨッシャー』と喜びを爆発させるのかなと思いましたが、『これは想定内のタイムでしょ』というメンタルだった時点で、ほかの選手とは違う。注目されたレースでしたが、いい意味で、彼が一番何も考えていなかったのではないかと思います」
伊藤氏も18歳のポテンシャルを称賛する。
「スケールの違いを見た感じがしました。肉体的にもそうですが、思考的に、です。9秒5を目指している人にとって10秒0台は通過点でしかない。『9秒台もそのうち出るよ』と自分の能力を疑っている様子もない。10秒0台の選手が10秒00をいかに切るかという考え方をするとお、そらく日常の延長線上で物事を考えていくと思いますが、9秒5を見ている人にとってはまた違うのだろうなと。いろんな考え方や行動などが変わってくるんだろうなという印象です」
その裏で、進化も見て取れたという。