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坂本花織、3回転半なしでROC勢に迫れた理由 鈴木明子「彼女には着氷後の0歩目がない」

「高難度のジャンプだけじゃない坂本選手は、今のフィギュア界で凄く価値のある選手」と評価【写真:松橋晶子】
「高難度のジャンプだけじゃない坂本選手は、今のフィギュア界で凄く価値のある選手」と評価【写真:松橋晶子】

他の選手が「やりたくてもできない」坂本の技術とは

 3回転アクセルのような大技は観る側にとっても分かりやすく、どうしても注目してしまいますが、フィギュアスケートの評価はそれだけではないのです。

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 坂本選手はその“加点を引き出すジャンプ”を狙って練習してきました。

 3回転アクセルや4回転ジャンプに挑んだ時期もありますが、今シーズンは完成度を高めることに重点を置き、各要素で1~5点が与えられる加点の3点以上を狙い、4~5点に届くように追求。どうしても「難しいジャンプを……」と焦り、中途半端にあれもこれもと手を出しがちですが、「ここで勝負する」と自分の特長を信じ、芯を貫いた。振付師、コーチもそれを引き出すことに集中したことが、今日のSPに繋がりました。

 もともとは彼女が持っているスケーティング技術が背景にあり、ジャンプ以外でも1歩目からの加速が素晴らしい。体重移動が非常に上手く、それを推進力に生かせることで、彼女のスピード感が生まれる。そういう基礎を小さい頃から中野園子コーチに教えられてきたことが生きている。あそこまで着氷後が綺麗に流れる選手は今回の五輪を見ても他におらず、坂本選手が一番際立っている。他の選手がやりたくてもできない技術です。

 フィギュアスケートは自分の武器を個性として、選手それぞれの個性があり、いろんな戦い方がある。だから、フィギュアスケートは面白い。高難度のジャンプだけじゃない坂本選手は、今のフィギュア界で凄く価値のある選手だと思います。

 五輪史上女子5人目の3回転アクセルを決め、5位に入った樋口選手も素晴らしい演技でした。結果的に本来取れる加点を取り切れなかった部分はありましたが、何より優しいボーカルと彼女の持ち味の伸びやかな動き、緩急を自在に操るスケートが最後までできていた。

 初めての五輪ですが、団体戦でSPを経験したことも大きかったのでしょう。団体戦以降、練習を見ていても動きは非常に良くなっていました。雰囲気を一度経験し、吹っ切れた印象もありました。1週間あまりで良い状態に仕上げることができたからこその今日のSPだと思います。

 15位となった河辺選手も果敢に3回転アクセルに挑戦しました。惜しくも成功はなりませんでしたが、評価すべきは“その後”です。3回転ルッツ―3回転トウループで加点がしっかりともらえるジャンプを跳び、緊張する初めての五輪でも堂々とした演技を見せてくれました。

 特に演技後半のステップシークエンスは伸びやかに滑ることができていたので、フリーは思い切ってやってほしいです。

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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

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