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ジャンプの「教科書」だったキム・ヨナの技術 エッジの跡を見ても分かる選手の癖とは

エッジの跡を見て分かる選手の癖「キム・ヨナさんの跳んだ後を見に行った」

――なぜ、浅田さんはそれができるのでしょうか。

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「腹筋です。体幹がしっかりしないと回らないので。あれはすごいですね」

――では、フリップは。

「カロリーナ・コストナー選手(イタリア)です。フリップは実はすぐには思いつかなかったのですが、フリップとルッツのしっかり使い分けができる選手が私の中でカロリーナかなと思って、彼女にしました。はじめて彼女のジャンプを見た時は一緒に出場した世界ジュニアでしたが、あのスピードにのって、あの幅。勢い余って、フェンスにぶつかることもありました。身長が高いのもありますが、手足の長さを生かしたジャンプはよくリンクに映えます」

――ルッツはキム・ヨナさん。

「ルッツを得意とする選手はなかなかいないんじゃないかなと思います。ただ、ウォーミングアップとしてトリプルルッツを練習する選手も少ないのではないかと思うのですが、癖が一番なくて、真正面から見た時にあのラインの美しいラインを出せる選手もそうそういません。ルッツはすごく難しいジャンプだから結構構えるのですが、悠々と余裕が見られたのがやっぱりキム・ヨナさんでした」

――あの失速もしないでジャンプを跳べるのは何が良かったのでしょうか。

「(ルッツが)得意というのが一番大きなことだったと思います。あとはトウをつくときにすごく小さなトウをつく。これは安藤美姫さんから学んだのですが、あまり大きなトウをついてしまうと失速と余計な力がかかってしまうので、素早く、軽くトウをついて跳びあがることがキム・ヨナさんの持ち味だと思います。私の場合、トウが大きくてさらにエッジに乗っていると余計な時間がかかったり負荷がかかったりするので、そういうのも癖の一つでした。今は結構そういうのも減点対象に見られますが、そういうのがなかった分、すごく小さなトウの穴で跳んでいました。信夫先生に言われてから、一緒に練習している時にどういう形で跳んでいるのか、エッジの跡も見に行きました」

――エッジの跡を見てわかるものなのでしょうか。

「わかります。良いジャンプと癖があるジャンプはわかるんです。だから、私のジャンプは悪い例のジャンプです(笑)」

――最後のアクセルは。

「アクセルは伊藤みどりさん文句なしです。圧巻です。やっぱり滞空時間が長い。滞空時間があるから高さが出せるのですが、高さと幅と、全てが揃っている。女子は今のロシアの選手もそうですが、高さはなくても回転速度で補って降りてくる。時々1/4減点(クォーター)が取られることもありますが、みどりさんのジャンプは一度跳び上がってから回転して、回転がしっかり回ってから降りてくる。男子のようなすごさがありますし、もう文句なしで3回転半回っています! という感じでした」

(3日掲載の後編「フィギュアスケートのジャンプの見分け方」へ続く)

(辛 仁夏 / Synn Yinha)

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中野 友加里

THE ANSWERスペシャリスト フィギュアスケート解説者

1985年8月25日生まれ。愛知県出身。3歳からスケートを始める。現役時代は女子史上3人目の3回転アクセル成功。スピンを得意として国際的に高い評価を受け、「世界一のドーナツスピン」とも言われた。05年NHK杯優勝、GPファイナル3位、08年世界選手権4位など国際舞台でも活躍。全日本選手権は表彰台を3度経験。10年に現役引退後、フジテレビに入社。スポーツ番組のディレクターとして数々の競技を取材し、19年3月に退社。現在は講演活動を行うほか、審判員としても活動。15年に一般男性と結婚し、2児の母。YouTubeチャンネル「フィギュアスケーター中野友加里チャンネル」も人気を集めている。

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