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女子選手に泣かれたらどうする?生理の指導法は? 男性指導者と女性アスリートの理想の関係とは

女性アスリートに涙された時の言葉かけは?

 質問コーナーでは参加者の質問に登壇者が答え、議論はより活発に。

「初めて女子運動部の顧問になり、女子学生との距離の詰め方に困っています」という声に、來田教授は「距離の詰め方」という考えに違和感を抱いた。「(質問者は)物凄く一生懸命考えている方と思いますが、その表現にすでに上下関係が発生している印象。クラス替えをして、初めて同じクラスになった友達に『距離を詰める』とは言わない。新しい出会いだ、うれしいな、楽しいな、どう付き合っていこうかと考えるもの。それと一緒で、まずは出会いを楽しむ感覚でいい」と述べた。

 片岡さんは「一人の選手として向き合ってみるのはどうでしょう。“女子学生と男性指導者”として向き合うから、どう入り込んでいいのか迷う。指導者の遠慮は絶対に伝わる。遠慮があると、ふとした一言が嫌な気分になることにつながる。必要以上に遠慮せずに」と助言。三壁さんは「距離感は非常に難しい。近い方がいいとは思うけど、近すぎることで良いこと、悪いことがある。誰かと近いと、誰かと遠くなる。遠い方が楽な選手もいるし、一方的ではなくお互いにコミュニケーションを取れたら」と述べた。

「女性アスリートに涙された時にどんな言葉かけをしているか」という質問に、三壁さんは「泣くという感情表現は大きなもの。失敗したから、うまくいかないからだと勝手に決めつけるのではなく、話を聞くと全然違うところに理由があることがある」と実体験を披露。練習中に集中を欠いた選手に練習後に「どうしたんだ?」と話を聞くと泣き出し、実は私生活で問題が起こってメンタルが不安定になり、周りに言えないまま「もっと集中しろ!」と鼓舞されて耐え切れなくなったのだという。

「『泣くなよ』と表面的に終わらせるのではなく、『どうした? 何があった?』『どんなところが気になってる?』と探っていく必要がある。感情表現が強い分、向き合ってあげることが必要」と話した。逆に片岡さんは涙する時は寄り添うより突き放される方が楽だったといい、「いろんなタイプがいるし、男性も女性も関係ない。私も監督をしていて、涙を流した男子選手もいる。女性だから泣くわけじゃないし、涙の理由を理解して一人一人に合った方法が見極めることが大切」と力説した。

 2人の話を聞いた來田教授は「どの質問も近いところあるが、“男性と女性は違うだろう”という入口から来ていますよね。男女は違うから、女性はこうだろう、男性はこうだろうと。でも、“男女は同じだろう”からスタートして、違うところを探していく方が指導者も楽だし、選手を一人の人間として見やすくなる」とアドバイス。ほかにも、少人数でグループを作る女子選手への向き合い方や、男女一緒に練習をさせる際の注意点など、さまざまな観点から参加者の質問に3人で答えていった。

 そして、最後は「今後どういう変化があれば女性アスリートのスポーツ環境はより良くなっていくか」という質問に答えたのは來田教授。「これは遠い道のりかもしれませんが、大きく分けて3つ大きな変化が必要と考えています」と述べ、「指導現場の変化」「スポーツ組織の変化」「社会の変化」を挙げた。

「『指導現場』は、女性アスリートも年齢を重ねて体は変化し、結婚・出産・育児とライフステージも変えていく。たとえ、高校の指導者でも中学の指導者でも『この選手には長い人生があるぞ』と長期的視点で育成する環境を整えていく。そのために私たちのような研究者もデータを提供していく必要があります。『スポーツ組織』は女性アスリートを育てるために女性コーチ・トレーナーも増やしていく。『社会』はなかなかスポーツ界だけでは変えられないですが、スポーツは社会の一部。プロとして女性アスリートの労働者も活動する。結婚・出産などのライフイベントのために保育所がさらに必要と社会で言われている課題もスポーツと無縁ではありません」

 こうして1時間の内容が終了し、午前中から全3部に渡ったイベントも終了。参加者にとって女性アスリートの未来を考えるヒントが詰まった1日になった。

(THE ANSWER編集部)


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