「言ってはいけない時代じゃない」 伊藤華英が「女子選手と生理」を声に出した理由
伊藤さんが抱く思い「アスリートたちが自分の経験を話せる機会になってもいい」
「意外と世の中がそういうところに興味を持つんだというのは、やってみて初めてわかる発見。アスリートが自分たちの経験を話せるような機会になってもいい。私自身は書くことで自分がすっきりするというより、アスリートの現状を知ってもらいたいという気持ちが強いです」
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
こうした思いによって発したメッセージは予想以上の反響を呼んだ。スポーツ庁で指導者向けに思春期を題材にした「部活動のあり方」という会議で発表したり、多くの取材を受けるようになったりした。「伝えているのは正しい判断をするということ。練習はやらないと伸びないし、過保護になっても伸びない。生理は自然と来るものだけど、楽にさせる方法があることを知っておいた方がいい」と経験を伝えている。
実際の指導では難しい面がある。伊藤さん自身も現在は大学講師として体育の授業を持ち、水泳を受け持つこともある。「男の先生はわからないから『休んでいいよ』と言う。けど、別に病気じゃない。もちろん、体がすごく冷えるとか、2日目で本当につらい場合はやらせないけど、貧血にならない程度に支障がない程度ならやってもいいと思う」と試行錯誤する日々だ。
指導における正解はない。ただ、指導上の“無知”は競技によっては選手寿命を縮めるリスクがある。例えば、体脂肪が減りやすい陸上の長距離選手は無月経になることがある。
「体脂肪が極端に減ると、ホルモンバランスが崩れて止まってしまう。無月経になると、骨粗しょう症になりやすい。すると、オーバーワークで怪我をして、競技寿命が短くなることにつながる。そういう悪循環をわかっていても、部活動は走らせる文化が残っている。軽い方が速いから痩せろと。選手自身も、月経がなくて楽という人も多いから、そうなると好ましくない」
こうした問題は個々の指導者が認知していても、表立って議論されることがなかった。だから「わかっていても、実行できないのが現状にあると思います」と言う。伊藤さん自身、現役時代は生理に対する正しい知識は持っていなかった。
「現役の時は来る前はしんどい、来たらめんどくさい。そういう感覚しかなかった。PMS(生理前症候群)など、いろんなことを知ったのは引退してから。ピルも飲んでみろと言われて飲んだけど、なんだかわかんなくて副作用があって悩んだり。副作用あるよと言われたけど、なんで副作用が来るかもわからないし」