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世界の最先端サッカー栄養トレンドに変化 3人の識者は「120分を視野に入れた準備を」

3人の見解、今後は「120分間の試合を視野に入れて取り組むべき」

 今回のウェビナーで3名の登壇者は、現代サッカーにおいてエリート選手は、筋グリコーゲン量をこれまで以上に意識して摂らなければいけない、とコメント。そうなる要因はは「試合数、試合時間の増加」といった環境要因や現代サッカーのスタイルなどが、複雑に絡んでいるそうです。

 例えばEURO2020では、1トーナメント戦の15試合のうち、8試合が120分間となりました。それに伴い、最大強度のプレー時間も長くなり、終盤になると、どうしても疲労がたまります。

 ちなみに、記憶に新しい昨年のカタール・ワールドカップ(W杯)決勝戦も、決勝戦はウォーミングアップから試合終了まで3時間45分に及んだといいます。フルで出場する選手はそれだけの長時間、プレーできるだけのエネルギー補給が必要になります。

 また、サッカーの場合はエキセントリックな活動が多いため、他の競技種目と比べ、グリコーゲンの再合成に時間がかかることがこれまでの研究で報告されています。それによると、試合後48時間では筋グリコーゲン量が試合前のレベルに回復しない選手が多く、72時間が必要。試合は中4日、空けることが望ましく「カタールW杯の日程は理にかなっていた」と話します。

 ところが、これまで研究では、競技前の筋グリコーゲンレベルが高い選手は、ヨーロッパの代表レベルのサッカー選手さえもほとんどいない、とモーア教授は言います。登壇した専門家が研究対象にしているのは、各国の代表選手のレベルです。そう考えると、プロフェッショナルとして素晴らしく整った環境下で、きちんと食事と栄養が管理されている選手たちでさえ、十分なグリコーゲン量を体内に蓄えることが難しい、といえます。

 サッカーは時代とともに、環境やプレースタイルの強度が高くなる方向へと変化。それに伴い、選手への負荷が増え、現状の栄養補給の仕方では間に合わない状態にあります。

 これまでのサッカーの栄養計画では、90分間フルで試合を出たときを基準に研究がされていました。しかし、今後は120分間も視野に入れて取り組まなければ、ベストパフォーマンスの準備が出来ないのではないか? というのが3名の見解です。
 
 また、進行を務めたユーケンドルップ教授は、基本のガイドラインをベースに、トレーニングの内容やフル出場か、途中交代かによって糖質の必要量や内容をカスタマイズして、一人一人に合った食事計画を立てていくことが大切である、と言います。

 これからのサッカーの栄養は、トレーニングと休養、食事、リカバリー、選手交代戦略を含め、科学で明らかになったことと現実とのギャップをどう埋めていくかが重要なのではないかと感じました。

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。アメリカ栄養士会スポーツ循環器栄養グループ(SCAN)並びに、スポーツ栄養の国際的組織PINESのメンバー。アメリカ栄養士会インターナショナルメンバー日本代表(IAAND)として、海外の栄養士との交流も多い。近著に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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