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「こんなにレベル高いのか」 憧れのスペイン移籍初日、乾貴士のサッカー観を変えた衝撃

エイバルはサッカー人生で「一番楽しい時代だった」

 スペインは個々の選手の技術が高く、基本的にパスサッカーで、非常に攻撃的なのが特徴だ。だが、乾がスペインで学んだものは、バルセロナで活躍したリオネル・メッシやネイマール(ともに現パリ・サンジェルマン)に象徴されるような攻撃力ではなかった。

「個人戦術の部分とか技術的な成長もあったけど、一番自分が成長したなと思うのは守備です。明らかに守備は変わりましたね。僕は体が小さいので、1対1になったら不利ですし、いい守備をするのが難しいんですけど、スペインはゾーンで守るんです。1人ひとりの距離感を大事にしてポジショニングを考えて守備をするので、そういう戦術なら理解できるし、やれる。全員で守備に対応するというところは身についたので、守備の意識はすごく高くなりました」

 日本からドイツへはもちろん、ドイツからスペインへの移籍も、言葉や環境、サッカーのスタイルが違うため、ある意味、一からの挑戦になる。だが「スペインのサッカーが好き」という気持ちが、乾のマインドをポジティブにし、スペインにおける日本人の評価を一変させる活躍を見せた。

「エイバルは、僕のサッカー人生で一番楽しい時代でした」

 本当にそう言えるだけの経験ができる選手は、決して多くはない。

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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乾 貴士

サッカー元日本代表 
1988年6月2日生まれ、滋賀県出身。野洲高2年時に“セクシーフットボール”と呼ばれた攻撃的なサッカーで高校選手権初優勝。2007年に横浜F・マリノスでJリーグデビュー、翌08年のセレッソ大阪への期限付き移籍を機に香川真司とのホットラインを確立し飛躍した。11年夏にドイツ2部ボーフムへ移籍すると、翌シーズンからは同1部フランクフルトでプレー。15年にはエイバルと契約し、念願のスペイン上陸を果たす。リーガ・エスパニョーラで通算6シーズンを戦い、166試合16得点はともに日本人選手の最多記録。C大阪への復帰を経て、昨年7月に清水エスパルスに加入。2年目の今季は自身14年ぶりのJ2を戦う。日本代表通算36試合6得点。18年ロシアW杯では2ゴールを奪い、日本のベスト16進出に貢献した。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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