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Jリーグ残留か海外挑戦か あの日韓W杯前年、川口能活が下した“前例なき決断”の裏側

海外挑戦で得た気付きについて語った、川口能活さん【写真:松橋晶子】
海外挑戦で得た気付きについて語った、川口能活さん【写真:松橋晶子】

「一度決めたら、後ろは振り返らない」―進路選択で大切にしていること

 川口さんは結局、2002~2003年シーズンでも正GKの座を奪えなかった。だが控えの立場で、いつ試合に出てもいいように万全の準備を施した。そのシーズン、チームはプレミアリーグ(1部)昇格を決めた。川口さんは優勝を決めた次節のシーズン最終戦、後半から出場。頑張りを認められたからこそ、その機会が与えられた。そしてあれほど待ち望んでいた、ピッチで勝利を味わう瞬間を手に入れたのだった。

 進路の選択で大切にしていることとは?

 川口さんは言う。

「こうするって一度決めたら、後ろは振り返らないこと。サッカーの強い私立の東海大学第一中に行くときも、清水商、マリノスのときも、そして欧州から帰ってきたからもそうです。行くと決めたら、そこでチャレンジすることしか考えませんでした。あのときの海外挑戦が正しかったのかどうかは、正直分かりません。だけど一つ言えるとしたら、そのなかで凄く得るものがあったということです。

 サッカーもそうですけど、物の考え方や生き抜く術(すべ)を学んだ気がします。あの苦しい時期があったおかげで、サッカーの指導者になっても活かすことができる。選手に声を掛けてあげる、分かってあげる。自分が指導者にしてもらって感謝していることを、今の選手にやってあげたい。プレーヤーズファーストを心掛けたい。コーチになって、選手を気持ち良くプレーさせることを一番に考えているのも、欧州での経験があるからだと思うんです」

 人生の長いスパンで見れば選択の結果に、成功も失敗もないのかもしれない。後ろを振り返ることなく、信じた道を往く大切さを川口さんの生き様が教えてくれている。

(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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