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“14歳の金メダリスト”の意外な今 騒動で一度は水泳が嫌いに…夏に起こる水難事故「着衣泳を知れば」――競泳・岩崎恭子

当時14歳でバルセロナ五輪金メダルを獲得した岩崎恭子さん【写真:産経新聞社】
当時14歳でバルセロナ五輪金メダルを獲得した岩崎恭子さん【写真:産経新聞社】

着衣泳の普及は競泳の強化にもつながる「オランダが恒例です」

「知ったのは現役時代。テレビ番組で五輪選手が洋服を着た時にどうなるか、波が出るプールでやったんです。それで初めて知りました」

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 岩崎さん自身は子どもの頃から海や川には入っていて、波にもまれる経験もあった。ただ、今の子どもたちはプールしか知らない。すでに学校やスイミングスクールのプログラムに「着衣泳」はあったが、もっと繰り返し伝えていかなければならない。日大卒業時には、将来的な目標として普及が頭にあったという。

「東日本大震災の時に着衣泳が注目されたんですけど、私が長女を生んだばかりで活動できなかった。その後もイベントなどでやらせてもらっていたんですが、昨年プロジェクトが立ち上がって、今は少しずつ大きくなっています」

 着衣泳というと泳ぎをイメージするが、岩崎さんによれば「泳いではだめ。浮くんです」。基本的に泳力は必要だし、泳力があれば助かる確率は上がる。ただ、泳げればいいというものではない。何かあった場合に助かるには泳力とともに知識は必須。岩崎さんはそう強調する。

「ちょっと泳げる人が、一番危ない。日本は海に囲まれているのに、海や自然のことを知らない人が多い。泳いじゃいけない。助けが来るまで浮く。そういうことを知ってほしいですね」

 子どもから大人まで、着衣泳を伝えているから、岩崎さんの言葉は的確で、分かりやすい。水難事故にあった時どうするか、具体的に助かる方法を聞いてみた。

「本当はライフジャケットをつけているのが一番いい。ない時はペットボトル。500ミリリットルのものでも、子どもなら浮く。あとは体力を温存すること。それから、大事なのは海などに入る時に自分の体調を考えることです。天気を確認し、靴とかサングラスとか装備をしっかりする。そういうことを考えてほしいですね」

 着衣泳を指導し、普及させるために、岩崎さん自身も学んだ。世界中が取り組んでいる着衣泳。オランダがいい手本になるという。

「オランダは30年前から着衣泳と泳力の強化を一緒にやっています。もともと海抜0(メートル)の国で。水難事故も多かったといいます。そこで、着衣泳にも取り組んだ。小さい子は、プールに入るのに免許証が必要なのです。子どものころから意識が違うんですよ」

 スポーツは国際競技力ばかりが注目される。五輪イヤーともなれば、なおさらだ。ただ、岩崎さんは着衣泳を広めることは競技力の向上にもつながると考えている。

「オランダは最近、競泳も強くなってきた。着衣泳の普及が競泳の強化にもつながる好例です。多くの子どもたちが着衣泳を知れば、水に入ることが楽しくなって競技をやる子も増える。子どもの競技人口が増えれば、その中から優秀な選手も出てくるかもしれない」

 だからこそ、競技だけに目をやるのではなく、着衣泳を含む水泳の普及が大切になる。命を守ることの大切さ、水と仲良く付き合うことの楽しさを伝えることも、水泳人としての使命だという。

「日本には古式泳法というのがあります。中には、浮くことに特化したものもあります。みんな『泳ぎを教えてほしい』と言ってくるけれど、泳ぎって、まず浮くことなんです。『大の字になって、上を見て浮いて』というと長い時間は浮けない。5分くらい浮ければ選手になれるけれど。なかなかいない。こういうことを、広めていきたいです」

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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