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初の首都圏開催でチケット完売、協賛企業も倍増した日本選手権 カーリング界の「大冒険」が成功した3つの要因

2年ぶり11回目の優勝に歓喜するSC軽井沢クラブ【写真:(C)JCA/H.IDE】
2年ぶり11回目の優勝に歓喜するSC軽井沢クラブ【写真:(C)JCA/H.IDE】

カーリング界が「見せる」大会に舵を切ったワケ

 大会はNHK-BSが連日放送。多くのメディアが、初戦から報じた。北海道や軽井沢には足を運べないメディアも、近場だけに集まりやすかったのだろう。そういう点でも「首都圏開催」の意味は大きかった。

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 カーリング界が「見せる」大会に舵を切ったのは、何よりも普及のためだ。五輪で人気競技になったとはいえ、盛んなのは北海道や長野県など一部の地域だけ。日本選手権といっても参加チームの7割は北海道か長野のチームで、上位も独占する。

 ロコ・ソラーレの活躍で「全国区」になった北海道・常呂町(現北見市)だが、女子で優勝したフォルティウスの決勝出場4人中3人も旧常呂町の出身。ここまでカーリングを育てた同町の熱意が日本中に広がっていくことが、競技の未来につながる。

 ただ、普及への道のりは簡単ではない。生で競技を見て、またはテレビを通じて「やりたい」と思う子どもたちも多いはず。しかし、施設がない。日本協会が「カーリングができる施設」としてあげているのは全国で40か所だけ。通年で常設シートを持つのは11か所だけで、うち9か所が北海道、長野、青森。他の地域は極端に少ない。

 「普及という点では、施設がない問題が大きい。増やしていくのが、次のステップ」と酒巻氏。もっとも、カーリングのシートは長さ45メートルと意外に大きい。ストーンを曲げるために表面にはぺブルと呼ばれる氷の粒が必要。人気があるからといっても、簡単に専用シートを新設することは難しい。

 カーリング協会がある都道府県は半数の24だけ。同じ冬季競技でも、スケートやスキーは当然のように全都道府県に協会がある。日本カーリング協会は「普及のためにすべての県に協会を」としているが、人気が沸騰したこの10年でも1つも増えてはいない。

 やるスポーツとしても、見るスポーツとしても「全国区」を目指すカーリング。さらなる普及へ課題は多いが、その一歩として「日本選手権首都圏開催」を成功させたことは大きい。もっとも、単発で終わってしまっては意味がない。成果が表れるまでに時間がかかるのが普及。続けていくことが重要になる。

 限られた場所や選手で行われることが多い冬季競技や夏季でもマイナーと言われるような競技は「内向き」になりがち。「資金がない」「人がいない」と守りに入る競技団体も少なくないが、なければ作ればいいし、集めればいい。

 新しいスポーツが次々と出てきて、選択肢は増える一方。真剣にファン拡大、普及を考えて攻めないと、競技は衰退する。持続可能性を考えれば、普及は強化以上に重要。「後戻りはしたくない」と酒巻氏。さらに攻め続けることが、カーリングの未来につながるのだろうと思う。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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