エディージャパン3戦目で刻んだ歴史 金星の理由、殊勲の男は「タマ」…見え始めた「超速ラグビー」の実像
ラグビー日本代表と若手候補らで編成されるジャパンXV(フィフティーン)が、マオリ・オールブラックスとの第2戦を26-14で勝利して、ノンキャップ戦ながらエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が復帰して3戦目で待望の凱歌を揚げた。ニュージーランド(NZ)先住民マオリの血を引くメンバーで組まれた“代表”は世界ランク10位以内クラスの強豪チーム。日本代表も含めて、第1戦まで過去4度の対戦で1度も勝てなかった強豪から、なぜ新生ジャパンは金星を奪えたのか。敗れた第1戦からの進化、修正ポイントから、指揮官が掲げる「超速ラグビー」の実像が見えてきた。(取材・文=吉田 宏)
ジャパンXVのマオリ・オールブラックス第2戦を検証
ラグビー日本代表と若手候補らで編成されるジャパンXV(フィフティーン)が、マオリ・オールブラックスとの第2戦を26-14で勝利して、ノンキャップ戦ながらエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が復帰して3戦目で待望の凱歌を揚げた。ニュージーランド(NZ)先住民マオリの血を引くメンバーで組まれた“代表”は世界ランク10位以内クラスの強豪チーム。日本代表も含めて、第1戦まで過去4度の対戦で1度も勝てなかった強豪から、なぜ新生ジャパンは金星を奪えたのか。敗れた第1戦からの進化、修正ポイントから、指揮官が掲げる「超速ラグビー」の実像が見えてきた。(取材・文=吉田 宏)
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4万人を超える収容力を誇るスタンドを埋めたのは1万4613人。すこし寂しい人数ながら、お得感を持ちながら家路に着いた真夏の準テストマッチ。スタンドの冷房完備のコーチ席に座らず、80分間グラウンドのチームベンチで選手の戦いぶりを見守った指揮官も、第2次エディージャパンの初勝利に汗を拭った。
「初戦のようにセットピース(スクラム、ラインアウト)での優位性はなかなか作ることが出来ませんでしたが、得点を重ねることが出来たことが勝利に繋がったと思います。先発出場した15人の中で13人が日本選手(日本で生誕した選手)です。決して海外選手への差別という意味ではありませんが、こういった形が今後の日本の強みになっていくと信じています」
大英帝国からの植民という苦難を経ながら、先住民の誇りと伝統を1910年から守り続けるマオリ・オールブラックス。勇猛に前に出て、果敢に、奔放にボールを繋ぐスタイルを持つ相手から、日本代表というカテゴリーの編成では5度目の挑戦で初めての勝利。エディーは「世界でトップ10に入るような力を持っているチームに勝てたのは大きな自信になる。若い選手が多いチームでは、こういう自信は大切だし、自信があるからこそ今後自分たちでやっていくことへの信条に繋がっていくと思う」と、この1勝の重みを語った。
記憶に蘇るのは、第1次エディー体制での“金星”だ、スタートの2012年シーズンにも、ルーマニア、ジョージアという世界10位台の国には勝利を収めていたエディージャパンだったが、フィジー、トンガら南太平洋諸国には全敗するなど評価が上がらないスタートになった。だが、2シーズン目の6月に迎えたウェールズから23-8と史上初めての金星をマーク。歴史的な1勝が、選手に自分たちのラグビースタイルを信じ、同じ方向性を持ったチームとしての結束力を一気に高めたことが、2015年の“ブライトンの奇跡”への着火点になった。
今回の第2次エディージャパンでは始動から3試合目と、遥かに早いタイミングで新たな歴史を刻んだことになるが、この1勝が11年前の金星同様に、まだ選手も模索状態のエディー流の「超速ラグビー」に確信を持たせ、“寄せ集め集団”である代表に、チームとしての結束力をもたらす効果が期待できる。
その試合運びも、自分たちに自信を植え付けるものになった。テストマッチとして挑んだ6月22日のイングランド戦、マオリ第1戦共に、立ち上がりから主導権を握ったのは日本だったが、時間の経過と共に相手に日本のゲームスタイルを読まれ、防御を崩されての完敗に終わった。だが、マオリ第1戦と先発13人を変更せずに挑んだ第2戦では、前週までの課題を飛躍的に修正させていた。