W杯4強のカギはリーグワンにあり? リーチの言葉から探るラグビー日本代表強化の道
W杯対戦国との間にある、20試合を超えるテストマッチ数の差
イングランドは6か国対抗、アルゼンチンがザ・ラグビー・チャンピオンシップと、毎年世界の列強と戦う大会に参加しているのに対して、日本は永続的な大会に参加していない。参加していたとしても、パンデミック中の日本の厳しい出入国規制で十分には試合を組めなかっただろうが、結果的に感染が世界に拡散してからW杯プレ・イヤーの今年まで、W杯の対戦相手に20試合を超える差をつけられている。
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その差を少しでも埋めるために、日本代表は今年10月にオーストラリアA代表とのテストマッチ対象外の3連戦を組んでいる。正代表ではないが、世界トップレベルの力を持つ相手との対戦で試合数を補填する苦肉の策だ。ジョセフHCも「今年はたくさん試合ができたので、W杯に向けていい方向に向かっていると思う」と試合数を増やせたことには前向きだが、対戦成績、世界ランキングともに上のイングランド、アルゼンチンに対して、選手、チームの経験値を上げるために不可欠な試合数でも後手を踏んでいるのは覆しようのない現実だ。
W杯イヤーとなる23年の試合スケジュールは多くのチームが未発表という状況だが、日本代表はカナダら環太平洋諸国とのパシフィックネーションズカップなどティア2クラスの相手との数試合が予定されているだけだ。それ以外の試合は今秋のオーストラリアA戦のように、正代表以外のニュージーランド・マオリ(先住民系)代表などと組むしか手立てがないのが実情だ。統括団体ワールドラグビーが各国のテストマッチをオーガナイズしてきているなかで、日本代表が希望する対戦や試合数を思うように組めない難しさもある。
その一方で、イングランドは年明け2月からは6か国対抗でティア1諸国との5試合を確保して、初夏にも数試合を行う公算だ。アルゼンチンも、ニュージーランドらと戦うザ・ラグビー・チャンピオンシップの開催こそ発表されていないが、W杯を踏まえた日程・試合数の調整などを講じながらの開催実現を目指し、それ以外のティア1クラスとのテストマッチも模索している。
W杯までの残された時間を考えれば、どんな芸当をしても試合数の格差を完全に埋めることはできない。そうなれば、国内でのリーグワンがどこまで代表強化に寄与できるのかは、重要さを増してくる。
では、リーグワンがどんなプラス材料を代表にもたらすのか。国際舞台も国内ラグビーも知り尽くすリーチは、こう指摘する。
「昔に比べると、リーグワンではトップ4の力が拮抗している。レギュラーシーズンでも毎週集中していかないと勝てない。パナソニック(埼玉WK)は以前ならどんな相手でも50点取れたが、そういう試合がなくなってきている」
単純に比較できない要素もあるのだが、過去5シーズンの4強による決勝トーナメント(準決勝、決勝の3試合)の平均得失点差を見ると、17.3→21.7→16.3→16.3→8.7と縮小傾向にあるのが認められる。リーチが語るように、各チームの競技力の向上が国内リーグ、そして日本ラグビーの水準を引き上げているのは間違いないだろう。