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なぜ、子どもたちが無料で野球ができるのか お金の壁を破るMLBユースアカデミーの意義

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「お金の壁を破るMLBユースアカデミー」について。

今回のテーマは「お金の壁を破るMLBユースアカデミー」について【写真:写真AC】
今回のテーマは「お金の壁を破るMLBユースアカデミー」について【写真:写真AC】

連載「Sports From USA」―今回は「お金の壁を破るMLBユースアカデミー」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「お金の壁を破るMLBユースアカデミー」について。

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 今年9月、メジャーリーグのテキサス・レンジャーズのユースアカデミーを訪問した。

 レンジャーズ財団が2017年に1500万ドル(約20億6000万円)を投じて建設した施設で、立派なスタンド付きの本球場と屋内練習場のほか、道路を挟んでさらに4つのグラウンドがある。お金を出しているのはレンジャーズだけでなく、選手たちもまとまった金額を寄付している。屋内練習場は通算3000本安打を達成し、球団の看板選手だったエイドリアン・ベルトレの支援によってつくられたものだ。このほかにウエイトトレーニングルーム等もある。

 メジャーリーグの運営するアカデミーと聞けば、プロ候補選手の育成かと思われるかもしれないが、エリートに限定していない。できるだけ多くの子どもを受け入れている。夏には中学生以上が参加するRBIと称されるリーグ戦が繰り広げられる。高校生年代は、学校の野球部と併用している選手が多く、学校野球部のシーズンが終了すると、夏の間はここでのリーグ戦に参加する。

 先に述べたように、さまざまなレベルの子どもがいるが、より能力の高い子どもたちも伸ばせるように、リーグ戦終了後には、選抜チームを編成し、他地区や他州のチームとの試合も行っている。また、秋から冬には、小学生から高校生までを対象にしたレッスンが提供されている。

 担当者は、ここで行うリーグ戦、レッスンは全て無料であると強調した。なぜ、無料なのか。お金による参加障壁をなくすためだ。アメリカも、恐らく日本でもそうだろうが、競技スポーツをやろうとするとお金がかかる。野球はバットやグローブなどの用具が必要なスポーツだが、アメリカでは、用具代だけでなく、個人レッスン料や遠征試合のための旅費交通費にお金がかかることが多い。家庭の事情によって、お金のかかるトーナメントやレッスンには、参加できない子どもがいる。経済的事情から、競技としての野球を継続できないケースも珍しくない。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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