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W杯優勝候補が仕掛けた“日本封じ”の罠 欧州遠征2連戦で得た学びと8強突破への宿題

台頭が望まれるBK陣の確固たるリーダー

 この発言はフランス戦に限らず、世界トップクラスの3チームと戦った秋のテストマッチを総括してのものだが、この試合のファーストトライには、流が指摘した日本に足りないものが如実に表れている。蹴り合いからのキックカウンターは、フランス陣中央付近から日本の防御の薄い右サイドを見透かされ、一気に自陣22メートルラインまで走り込まれている。そして、トライに繋がるグラバーキックも、日本選手が全員で防御ラインを上げてできたスペースをヌタマックに察知されてのもの。タッチライン際にいたプノーも、ヌタマックがボールを持った時点でキックをするように合図を送りながら駆け上がったことで、トライにまで結び付いた。

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 流が訴えるゲームを読む能力は、経験を積み重ねて身につけていくものだ。W杯キックオフまでの時間でどこまで熟成できるかは未知数だが、フランスが同じピッチの上で見せてくれたお手本に、残された9か月余りで1歩でも、1ミリでも近づいていかなければ、トップ4という高みには辿り着けないだろう。

 目標に掲げるW杯でのベスト8突破のためにも、戦術的なキックが不可欠だというのが日本代表首脳陣の考え方だ。秋の国内でのオーストラリアA代表、オールブラックス戦では、有効なキックからのプレッシャーも見られたが、フルメンバーに近い世界ランク2位相手には、前述のように簡単にカウンターパンチを喰らっている。前半9分にも日本はセンターラインを挟んでの蹴り合いを挑んだが、最後はラックでの反則で有効なアタックにはできず、フランスのPKから最後はPGを奪われている。

 このようなキッキングゲームでも、どのような位置で、どんな質のキックを、どの地点に落とすのか。同時に、キックボールにどうプレッシャーをかけていくのかという戦術は、さらに熟成が必要だとフランス代表に教えられた。確かに、それ以前のフィジカル勝負でやられる場面も多かったが、従来日本代表はパワー勝負を仕掛けてくる相手の重圧に、スピードと運動量で対抗するのが流儀だ。

 イングランド戦も含めた個人的な印象だが、キックの選択も含めた攻守両面でBK(バックス)の中に強いリーダーシップを持ち、視野の広さを生かした判断力でチームをコントロールしていく選手の成長が必要なのではないだろうか。期待されるのはゲームメーカーのSOの選手たちだが、今回の遠征に参加したのはともに代表6キャップの山沢拓也(埼玉WK)、李承信(神戸)、フランス戦が初キャップだった中尾隼太(BL東京)と経験の浅い若手ばかり。W杯経験者である70キャップの田村優(横浜キヤノンイーグルス)が選外となり、29キャップの松田力也(埼玉WK)は調整中という状態で22年の代表強化期間を終えたが、W杯イヤーとなる来シーズンで、どこまでゲームメーカーを熟成できるかも重要なチャレンジとして残された。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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