W杯優勝候補が仕掛けた“日本封じ”の罠 欧州遠征2連戦で得た学びと8強突破への宿題
イングランドのラッシュアップ・ディフェンスに驚き
まさに世界有数の相手に胸を借りたことは、まだ経験値の浅い若手を投入してきたジョセフHCにとっては大きな収穫だったはずだ。同時に、W杯で2試合(23年9月10日・チリ戦/同28日・サモア戦)を行うスタジアム・ド・トゥールーズでのテストマッチも、約9か月半後の本番には大きなアドバンテージになるのは間違いない。藤井雄一郎ナショナルチームディレクターは、帰国後の24日に行われたブリーフィングで、こう“収穫”を語っている。
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「イングランド戦はすごい観客の中でプレッシャーも感じた試合だった。そこをしっかりと修正してフランスに挑んで、勝ててないので納得はできないが、それなりの成果は出せたと思う。接点で圧力を受けるのは分かっていたなかで、ああいう点数で喰らいついていけた。ゴール前まで行って、なかなか点に繋がらなかったのを、どうしていくかが課題」
同ディレクターは、チャンスを作りながら仕留めの部分で決めきれなかったことを課題に挙げたが、実際のヨーロッパでの2敗から浮かび上がる、日本に突き付けられた宿題はどんなものだったのか。試合ごとに振り返ってみよう。
まずは現地時間11月12日に、トゥイッケナムで行われたイングランド戦からだ。
18年の遠征では15-35(前半15-10)と渡り合った日本代表だったが、4年ぶりの対戦では主導権を奪い合う立ち上がりから苦戦を強いられた。起点となるセットプレーでは、スクラムで押し込まれて反則を連発。フィールドプレーでも、サイズも重さも上の相手に個々の接点で体重をかけられたことで、自慢のスピードを生かす展開に持ち込めなかった。このようなサイズと重さを意図的に日本に対して使ってくる戦い方は、イングランドはもちろんだが、来年のW杯で対戦する相手はしっかりと準備してくるだろう。
そして、このゲームで何より驚かされたのは、イングランドのライン防御だった。1週間前に敗れたアルゼンチン戦までとは全く違う、素早く防御ラインを上げるラッシュアップ・ディフェンスを仕掛けてきた。
狙いは明白だ。どの強豪国にとっても煩わしい日本代表のスピードのあるアタックをどう封じ込めるか――。現日本代表のスタイルのベースを築いたエディーが、素早いプレッシャーを使って、精緻でスピードを意図した日本のアタックを寸断しようという狙いが上手く機能していたのが、この試合だった。試合後のPR(プロップ)稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)の言葉が、苦闘ぶりを物語っている。
「日本のラグビーはスキル、ディテールの上に成り立っている。スクラムやブレークダウン、パス、スペースを作ることに関しても、すべてその上に成り立っています。そのディテールが発揮できた時はゲインを取れたし、トライも取れましたが、それが失われた時は相手の時間帯になっていた。いかに自分たちの時間を長く使えるか、そこにフォーカスしていきたい」