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ラグビーW杯まで11か月、日本代表の現状は? “1.5軍”豪州戦で見えた列強打破の条件

19年W杯スコットランド戦での象徴的なワンプレー

 思い起こすのは、稲垣も大活躍した3年前のW杯日本大会だ。2015年のW杯まで、日本はすべてプール戦(1次リーグ)で敗退し、通算でわずか1勝しか果たせない弱小チーム。それが19年大会では、一時世界ランキング1位にも立ったアイルランド、そしてスコットランドという世界の列強を倒して史上初のベスト8進出という快挙を達成した。

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 この躍進を象徴するプレーがある。19年10月13日に行われたスコットランド戦(28-21)で稲垣がマークしたトライだ。敵陣でのラックを起点に左展開を仕掛けると、HO堀江翔太-LO(ロック)ジェームス・ムーア-FBウィリアム・トゥポウ、そして稲垣がまるでBK(バックス)のように華麗にボールを繋いで仕留めたものだ。ボールを繋いだ4人の中で、3人が普段は体を張った肉弾戦が役割のFW(フォワード)で奪ったトライとして注目されたが、これは偶然にFW選手にボールが回ったものではない。このシーンのように、密集周辺に多くのFW選手が立っている状況からのアタックを、チームが練習で時間をかけて繰り返し準備してきたものだった。

 このプレー以外でも、日本代表は個人技ではなく、複数の選手が組織として機能して相手防御を崩し、抜き去って奪ったトライを何度も見せている。これは日本が他国と比べて、代表チームの活動としては異例の時間をかけて強化できたことが背景にある。

 今回のオーストラリアAとの第3戦を勝ち切った後に、稲垣が日本代表独自の強みについて語っている。

「チームは、時間をかけて良くしていくものだと思っていますね。他の国とは違うと思います。これは日本代表としての独自の文化だと思います。代表はどこの国もそうですけど、戦術って結構シンプルなんです。やはりどこのチームも、集まってすぐ試合なので、アタックもFWが真っすぐ来ますし、スペースを作る術もシンプルなアタックが多い。そこに対して僕らもシンプルなラグビーをすると、フィジカルでどうしても負けますよね。じゃあ、そのフィジカルに対して自分たちはどう対抗していくのか。スペースを作っていくのか、自分たちの弱みもすべて認めた上で、チャンスを作り出していくのか。そういう理解度って、集まってすぐにはできないと思います。特に新しい選手が入ってきた時はね」

 代表チームといえば、その国の最高の選手が集まったチームだ。だが、戦術やチームとしての完成度という点では、時間的な制約の中で戦っているという弱みもある。強豪国であれば、代表選手のほとんどはプロとしてプレーしている。そのため、所属チームでのプレーを重視すれば、当然、代表での活動にしわ寄せがくる。多くの強豪国が、W杯前の準備期間も長くて1か月程度で大会に臨んでいるのが現実だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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