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高校運動部の「自主的な行動」とは何か 体操部廃止に米国の高校生が実施した抗議とは

廃止案に反対する体操部の生徒たち、生徒会に協力を求めて取った行動とは

 本題に入る前にお金の話を書いておきたい。アメリカでは学区ごとに毎年度の教育予算を立てている。予算の審議は年度中に何度も行われ、年度末近くに予算を成立させる。学区の教育予算に、運動部予算も組み込まれており、全体の予算に占める割合は1~3%といわれている。
 
ローレンス高校とローレンスフリーステート高校を抱える学区は、新型コロナの影響もあって、税収や州からの補助金が減る見通しで、学区の教育予算の削減を迫られている。昨年12月に行われた予算ミーティングでは、何を削減するかが議論され、高校の体操部を廃止するという案が出た。ローレンス高校とローレンスフリーステート高校の2つの学校の体操部は、同じ体育館を使って合同練習していて、1人のコーチが両校体操部の指導をしている。

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 この学区の予算ミーティングは公開されていて、動画による中継もあり、議論された内容は保護者らにメール配信されている。体操部廃止の案が出されたことは、すぐに生徒たちの知るところとなった。

 体操部の生徒たちは部の廃止に反対している。そして、高校の生徒会に協力を求めたようだ。生徒会長は全校生徒に向けて、体操部の廃止案に反対する生徒は抗議活動に参加して欲しいと呼びかけた。

 彼らは感情に任せて、抗議したのではなく、落ち着いて行動した。生徒会は事前に校長から「平和的な抗議活動であれば、参加する生徒を処分しない」との言葉を引き出していることからも、その様子がうかがえる。

 地元紙のローレンス・ジャーナル・ワールド電子版が2021年12月8日付で伝えたところによると、8日の4時間目の授業が始まるとき、ローレンス高校では、体操部の廃止案に反対する生徒たちは、授業には出席せず、中庭付近に集まって座り込みを行ったという。ローレンスフリーステート高でも、同じ時間帯に、生徒たちによる抗議運動が行われたそうだ。

 このように地元紙でも体操部の廃止案と生徒の抗議運動が取り上げられたが、この抗議運動の一部始終を最も詳しく伝えたのはローレンス高校の新聞部である。新聞部の記事によると、およそ350人の生徒がこの抗議活動に加わったという。新聞部撮影の写真からは、通路や階段に生徒たちがびっしりと座り込んでおり、その通路の中央で体操部員が床運動の技を披露しているのがわかる。一方のフリーステート高の新聞部でも、抗議活動を録画し、SNSでアップするなどして、状況を伝える努力をしていた。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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