高橋大輔のような選手は「育てられない」 中2から指導、恩師が語る親子すら超えた絆
隆盛を極める近年の日本フィギュアスケート界には、次々と新たな才能が頭角を現している。北京五輪でも男子シングルで鍵山優真が銀メダル、宇野昌磨が銅メダル、女子シングルでは坂本花織が銅メダル、そして団体でも史上初めて銅メダルを獲得と、素晴らしい結果を手にした。
連載「名伯楽のフィギュアスケート論」最終回、理想を追求し続けた高橋大輔の姿
隆盛を極める近年の日本フィギュアスケート界には、次々と新たな才能が頭角を現している。北京五輪でも男子シングルで鍵山優真が銀メダル、宇野昌磨が銅メダル、女子シングルでは坂本花織が銅メダル、そして団体でも史上初めて銅メダルを獲得と、素晴らしい結果を手にした。
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そうした成功の土台を作った1人と言えるのが、数々のスケーターを育ててきた長光歌子コーチだ。高橋大輔を中学時代から長年指導し、2010年バンクーバー五輪での日本男子初の銅メダル獲得に導いた。そんな歴史を築いた名伯楽が語る「フィギュアスケート論」。最終回は4回転時代の先駆けとなった高橋の挑戦と、後輩たちに受け継がれていくものについて話を聞いた。(取材・文=小宮 良之)
◇ ◇ ◇
――長光先生にとって、高橋大輔選手はどのような存在でしょうか? やはり、息子同然ですか?
そう訊ねると、長光コーチはいたずらっぽく笑って言った。
「どうですかね。彼にとっては、遠い親戚のおばちゃんくらいの感じだと思います(笑)」
しかし、その絆はある意味で親子すら超える。高橋が中2から週末の練習で長光宅に寝泊まりするようになり、大学入学後は下宿生活。ともに海外を転戦し、スケートを探求した戦友だ。
その足跡は、まさにフィクションを超えるドラマだった。一つの戦いが違う物語を生み出し、それは次なる戦いにつながり、やがて日本フィギュア界で金字塔を打ち立てた。2人はシングルとアイスダンスで袂を分かったが、深いところでは今も強くつながっている。
――長光先生は、2014年に高橋選手にさいたまでの世界選手権を回避させ、そのまま一度、引退したことを「最大のミスリード」と言ってらっしゃいました。しかし、高橋選手の“満たされない飢え”が物語の伏線だったのかもしれません。結果として2018年に高橋選手は復活し、さいたまでの世界選手権出場権をつかみました。諸事情から棄権しましたが、今年3月、アイスダンス代表として出場することになった世界選手権(フランス・モンペリエ開催)は、来年にさいたまで開催される世界選手権につながるはずで……。
「大輔の人生はいつもそうですが、それも巡り合わせというのですかね。しかも、その前に実は(2010年の)バンクーバーオリンピックの後にあった(2011年の)さいたまでの世界選手権で現役を辞めようと思っていたんです。でも、日本開催だからもう1年やろう、と思って。そこで東日本大震災があって、モスクワでの代替開催になったんです。それで(2014年のソチ五輪まで)続けることになったんですが」