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「フィギュア選手とメイク」の奥深き世界 演者へと切り替える“職人”のこだわり

キス・アンド・クライまでを考慮し、メイクを考えるという石井さん【写真:コーセー提供】
キス・アンド・クライまでを考慮し、メイクを考えるという石井さん【写真:コーセー提供】

「スケーターを見れば、その時代の美しさがわかる」

 フィギュアスケートのような芸術性の高いスポーツでは、世界観の体現と優れた機能性を両立するメイクが求められる。アスリートメイクを任された当初、石井さんに課せられたのは、コーセーで市販されている化粧品や道具だけで完成させる「徹底的に汗水に強いメイク」の追求。当時はスポーツに特化したメイクアップアーティストもいなかったため、手探り状態のスタートだった。

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「例えば、アーティスティックスイミングでは、水中で激しく動くため、普段のメイクのままでは、メイクが崩れたり、色が出なくなったりします。また、当社の商品に水着や衣装に合う色が必ずあるとは限りません。当時は自分の肌を使って、とにかく繰り返し検証。無い色は複数の色を肌の上で重ねたり、異なるテクスチャーのコスメを重ねることで落ちにくくしたり、組み合わせによって、問題を解決する方法を見出しました。

 ちなみに当時のアーティスティックスイミングの選手のアイシャドウは、ウォータープルーフのリキッドタイプの上にパウダーをのせ、さらにリキッドタイプを重ねています。このように3層にすると、発色が良いうえ、水中でも肌にピタッと密着して崩れません。現在は化粧品もさらに進化しており、汗水に強く崩れにくく、発色のよいウォータープルーフのアイシャドウを使用しています」

 フィギュアスケートのメイクでは、演技中はもちろん、キス・アンド・クライまでを考慮する。

「髪を下ろす、ポニーテールにする場合、リップはマットに仕上げます。グロッシーに仕上げると演技中、髪が唇に張り付く恐れがあるからです。また、フィギュアスケートの場合、氷上よりもキス・アンド・クライの際、汗がドッと噴き出す場合が多い。キス・アンド・クライはテレビやオーロラビジョンで顔がアップになる瞬間ですし、感動的なシーンでもある。ですからこのときに、アイラインやマスカラがにじまないよう、意識しています」

 石井さんはまた、シーズンのプログラムに合ったメイクデザインも選手たちに提案している。

 フィギュアスケーターは新シーズン開幕前のアイスショーで、新プログラムをお披露目することが多い。選曲や衣装、どんなキャラクターを演じたいのか? 石井さんはアイスショーのメイクルームで直接、選手と対話しながら、新プロのメイクデザインを仕上げていく。

「ラテンのような情熱的なイメージでいきたい、と言われたら黒のアイライナーを強めに入れてレッドのリップをひく、という具合に、衣装や曲、演じる世界観に合わせた表現や色選び、メイクの強弱を心がけています。大会中は自分でメイクを再現してもらうため、選手にはメイクブースで、使用するアイテムを使い込んでもらっています」

 デザインを考える際、プログラムの世界観を大事にしながら、社会的なメイクのトレンドも取り入れている。「スケーターを見れば、その時代の美しさやトレンドがわかる」。これが石井さんのこだわりだ。

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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