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慶大ラグビー部時代に伝説の決戦 ロッテ社長など歴任したリーグワン理事長の異色の人生

グローバルな世界に飛び込み、名立たる企業のトップを歴任

 この名勝負で、玉塚理事長にはほろ苦い記憶がある。

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「あの試合は僕のミスで負けたんです。序盤のラインアウトで、僕は最後尾に立っていた。相手のBKが内側を突いてきたら絶対に守る役割。その時、同志社のSO松尾(勝博)へのパスが浮いたんで『倒せる』とタックルに行ってしまった。でも、松尾はボールをはたくようにタップしてCTBの平尾に繋いだんです。僕が松尾にタックルに入るのを見て、平尾が内側に切れ込んできて最初のトライを取られてしまった。あそこは、僕の役割は松尾を潰すことじゃなく、(内側に駆け込んできた)平尾を押さえること。完全に僕の責任だった」

 玉塚氏は、この名勝負を最後にトップレベルでのジャージーと決別する。選んだ進路は、神戸製鋼でもサントリーでもなく旭硝子(現AGC)だった。ラグビーとは一切繋がりのない企業だったが、それが求めていた新天地だった。決勝敗退の失意が理由ではなく、猛練習の4年間で、ラグビーから離れたいという気持ちが強くなっていったのだ。

「だからラグビー的な就職をしなかったんです。全く先輩がいない会社に行きたかった。それとグローバルな可能性がある企業を希望するなかで、たまたま拾ってもらったのが旭硝子だった」

 日本代表を目指すようなラグビーからは離れたが、大学1年の春と同じように楕円球への情熱は潰えていなかった。慶大をはじめ、強豪大学のOBが集まるエーコンクラブや、三菱グループのラガーマンで編成されるオール三菱などでプレーを続け、赴任したシンガポールでは同国代表にも選ばれた。シンガポール代表として出場した7人制の国際大会「香港セブンズ」で、オーストラリア代表でも最高のCTBとして歴史に名を刻むティム・ホランに真っ向勝負を挑み、膝の靭帯を断裂しての現役引退はいわば勲章だ。

 その一方で、旭硝子を進路に選んだ理由の1つでもある、グローバルな世界で挑戦したいという情熱も高まっていった。社員として留学したアメリカの大学院でMBA、国際経営学修士号を取得するなどビジネスマンとしてのスキルアップを続けて、挑戦の場を旭硝子からコンサルティング業、そしてファーストリテイリング、ローソンと経営者としてのトライへと広げていった。一見すると名立たる企業のトップを歴任している印象だが、ファーストリテイリング社長退任後に設立したリヴァンプや、ハーツユナイテッドグループ(現デジタルハーツHD)などベンチャー企業での活躍も旺盛だ。

「リヴァンプというのは面白い会社です。企業というのは、成長が止まったり苦しい局面になった時に、外からキャタリスト(触媒)として人材を入れて組織改革や仕事のやり方を変えたり、業務の骨格を変えたりする。リヴァンプって、蘇らせるとか刷新するという意味ですが、企業に変革をもたらせる会社を作ろうという仮説で創ったんです」

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玉塚元一

一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン理事長 
1962年5月23日生まれ、東京都出身。中学からラグビーを始め、慶應大でフランカーとして活躍。1984年度の全国大学選手権で準優勝した。卒業後は旭硝子(現・AGC)へ入社しビジネスマンとしての第一歩を踏み出すと、ファーストリテイリングやローソンなどのトップを歴任。現在はロッテホールディングス代表取締役社長を務める傍ら、今年10月に一般社団法人ジャパンラグビーリーグワンの理事長に就任した。

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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