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“見える化”が選手の能力を伸ばす? 「データ」は野球をどう変えるのか(前編)

神事氏に専門家の視点からデータの必要性について語ってもらった【写真:編集部】
神事氏に専門家の視点からデータの必要性について語ってもらった【写真:編集部】

神事氏が楽天で経験した「データが選手を変えた事例」とは

 そんな中で近年、脚光を浴びているのが、高性能弾道測定器「トラックマン」だ。現在、日本では広島を除く11球団が導入。「スタットキャスト」とは、何が異なるのか。

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「トラックマンとはスタットキャストを構成している一つのプログラムの名称です。スタットキャストはカイロンヘゴという“人をトラックするシステム”、トラックマンという“ボールをトラックするシステム”の2つを合わせてスタットキャストと呼んでいる。取っているデータが異なります」

 現状、用途の差はあるという。それは「ファン向けの米国」と「選手向けの日本」だ。

「メジャーリーグとの大きな違いはMLBとその関連会社がスタットキャストの権利を全て買っていること。それらをファンのために使うことが中心。日本は球団が個別にトラックマンのデータを買っている。そうなると、視聴者より選手の能力を上げるというところにフォーカスされていく。メジャーはファン向けのコンテンツを作るためにスタットキャストのデータを使っている。日本はプレーヤーの能力を上げ、またはチームを強くするためにトラックマンのデータを使っている。この点は大きく違うところです」

 現場では、どんな風に活用されているのか。神事氏自身、最も早く導入した楽天で14年から3シーズン、データアナリストを務めていた。当時の体験をもとに解説する。

「試合が終わったら取れているデータを分析して選手に返すというのが仕事です。当時、自分の仕事は主に投手向け。その日のボールがシュートしたり、ホップしたり、どのくらいのボールの変化量だったのか。先発投手なら30球くらい投げたらどんどんシュート回転してくるとか、リリースの位置が落ちてくるとか、それぞれの傾向があったので、なぜそうなるのか、選手だけじゃなくトレーナー、コーチと共通のデータを使い、みんなでディスカッションしていました」

 選手に対し、データから見えたものを個別にフィードバック。こうした活用法により、実際に楽天の投手陣が良くなった経験もあるという。

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神事 努

国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授。1979年生まれ。バイオメカニクスを専攻し、中京大学大学院で博士号を取得。2007年から国立スポーツ科学センター(JISS)のスポーツ科学研究部研究員。14年から3シーズン、東北楽天ゴールデンイーグルスでデータアナリストを務めた。現在は「ネクストベース」のエグゼクティブフェロー(主任研究員)も務め、同社で野球のデータ分析サイト「Baseball Geeks」を展開。スタットキャストの機能のわかりやすい解説なども行っている。

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