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拳四朗VS矢吹に見るボクシングと“バッティング” 絶妙な距離感を狂わせた要因とは

ボクシングの元WBC世界ライトフライ級チャンピオンである木村悠氏が、ボクサー視点から競技の魅力や奥深さを伝える連載をスタート。2回目となる今回は、9月に行われたWBC世界ライトフライ級タイトルマッチで起こった“バッティング騒動”について、元ボクサーとしての自身の経験と見解を示している。

9月に行われた世界戦の10回、寺地拳四朗(右)にボディーを放つ矢吹正道【写真:アフロ】
9月に行われた世界戦の10回、寺地拳四朗(右)にボディーを放つ矢吹正道【写真:アフロ】

連載「元世界王者のボクシング解体新書」: 競技の性質上、バッティングはよくある

 ボクシングの元WBC世界ライトフライ級チャンピオンである木村悠氏が、ボクサー視点から競技の魅力や奥深さを伝える連載をスタート。2回目となる今回は、9月に行われたWBC世界ライトフライ級タイトルマッチで起こった“バッティング騒動”について、元ボクサーとしての自身の経験と見解を示している。

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 ボクシングの前WBC世界ライトフライ級王者・寺地拳四朗(BMB)陣営は8日、王座陥落となった9月22日の矢吹正道(緑)との世界戦の裁定を巡り、日本ボクシングコミッション(JBC)に質問状を送ったものの、その回答に不満を表明した。陣営側は9ラウンドで拳四朗が右目上を切って流血したが、直前に故意のバッティング(頭での相手への打撃)があったのではないかとして、JBCの見解を求めていた。

 9月に行われたこの試合は、絶対王者として君臨する拳四朗に、矢吹が挑戦者として初の世界戦に臨む注目の一戦だった。矢吹はこの階級では破格のパンチャーで、91%のKO率を誇る。

 前半は拳四朗も手数が少なく、矢吹が拳四朗の打ち終わりにパンチを合わせてペースを握り、途中採点は2-0で矢吹がリードした。ポイントを取られ焦りを見せた拳四朗は、距離を詰めてポイントを取りに行った。

 これまでの世界戦ではリードすることが多く、8戦全勝5KOと抜群の安定感を見せていた拳四朗。しかし、この日はリードを許し、追っていく展開となった。距離も詰まり、打ち合いが強い矢吹の間合いに引き込まれていく。8ラウンドではさらに点差が開き、3-0と矢吹にリードを許した。

 焦った拳四朗は、勝負をかけて前に出た。9ラウンド、問題とされるシーンが起きた。矢吹が飛び込みながら前に出た時、ヘッドバットのような形となり拳四朗がカット。レフェリーはパンチによるヒッティングの傷だと判断した。

 ヒッティングとしてのカットの場合、途中で試合が止まると拳四朗のTKO負けとなる。そのため拳四朗は次の10ラウンドに勝負をかけ、激しい打ち合いを仕掛けたが、逆に矢吹の返り討ちにあいTKO負けを喫した。

 ボクシングでは競技の性質上、バッティングはよくある。特に近い距離での打ち合い時では、前に出ようとすると両者の頭が当たってしまう。

 両者の頭が当たっても当てた方より当たった方がカットしやすく、特に目の上や額はカットしやすい。私も経験があるが、顎を引いた状態では切りにくく、逆に顎が上がった状態の時に頭が当たると切りやすい。ボクシングでのカットはパンチでのヒッティングもあるが、ほとんどの原因はバッティングだ。

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木村 悠

1983年生まれ。大学卒業後の2006年にプロデビューし、商社に勤めながら戦う異色の「商社マンボクサー」として注目を集める。2014年に日本ライトフライ級王座を獲得すると、2015年11月には世界初挑戦で第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオンとなった。2016年の現役引退後は、株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動、社員研修、ダイエット事業など多方面で活躍。2019年から『オンラインジム』をオープンすると、2021年7月には初の著書『ザ・ラストダイエット』(集英社)を上梓した。

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