なぜ7人制ラグビーは東京五輪で惨敗したのか キーマン2人の言葉から紐解く本当の敗因
東京2020でのメダル獲りに挑んだ7人制ラグビー日本代表は、男子が参加12チーム中11位、女子が同最下位という結果に終わった。とりわけ男子は、前回リオデジャネイロ五輪で4位という好成績を残したが、母国での期待に応えられなかった。8月11日には大会を総括する会見が行われ、退任が決まった男子の岩渕健輔、女子のハレ・マキリ両ヘッドコーチ(HC)と強化責任者の本城和彦・男女7人制ナショナルチームディレクターが東京での挑戦を振り返った。チームの戦いぶり、パフォーマンスについては7月29、8月2日の本コラムでも書いた通りだが、3年後のパリでの雪辱のために、会見から読み取れるラグビー協会とチーム首脳陣の5年間の挑戦と挫折を、前後編2回に分けて検証する。(文=吉田宏)
男子は12チーム中11位、ベテラン吉田宏記者が前後編で検証
東京2020でのメダル獲りに挑んだ7人制ラグビー日本代表は、男子が参加12チーム中11位、女子が同最下位という結果に終わった。とりわけ男子は、前回リオデジャネイロ五輪で4位という好成績を残したが、母国での期待に応えられなかった。8月11日には大会を総括する会見が行われ、退任が決まった男子の岩渕健輔、女子のハレ・マキリ両ヘッドコーチ(HC)と強化責任者の本城和彦・男女7人制ナショナルチームディレクターが東京での挑戦を振り返った。チームの戦いぶり、パフォーマンスについては7月29、8月2日の本コラムでも書いた通りだが、3年後のパリでの雪辱のために、会見から読み取れるラグビー協会とチーム首脳陣の5年間の挑戦と挫折を、前後編2回に分けて検証する。(文=吉田宏)
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選手たちの奮闘を結果に繋げることは出来なかった。5年前に掴みかけたメダルだったが、東京ではあまりに遠い位置で輝いていた。リオ五輪へ向けても男女7人制総監督として強化に携わり、2018年からチームの指揮を執ってきた岩渕HCは、オンラインで行われた総括会見で東京での挑戦を、こう総括した。
「前向きな結果が残せず本当に申し訳なく思っております。ナイーブさ、繊細さがゲームの中で出てくる時に、チームをどうやって立て直せるかが大きな鍵でした。特に1戦目、2戦目にいい形でパフォーマンスが出来なかった。国際大会が出来ない状況になってからの1年半の強化という意味では、活動することを優先しながら進めてきた。男子の実力を考えると、保守的な戦い方、強化の仕方では力が出せない状況なのは過去の力関係からもはっきりしていた。そこで思い切った強化戦略を私自身がHCとして出すことが出来なかったのが、自分自身の反省、責任として強く感じています」
新型コロナウイルス感染が続く中での開幕までの1年半に、思い切った強化ができなかったこと、五輪本番では勝負を賭けたフィジー、英国との最初の2試合を勝てなかったチームの脆さを敗因に挙げている。HCと同時に日本協会専務理事を兼務している立場上、チームの活動で陽性者を出さないことに細心の注意を払ってきた一方で、強化をマックスまで引き上げられず、実戦では采配面の消極さがあったのは悔やまれる。
ちなみに、同HCが語った「1年半」というのは、東京五輪の1年延期が決まり、同時に7人制の国際大会(ワールドシリーズ)が中断された20年3月からの時間だ。確かに延期決定から残された時間で、チーム強化が加速できなかったマイナス要因はあるだろう。パンデミックの中での強化の難しさは、メダルを獲得した女子バスケットボールなども含めて、どの競技でもあったはずだ。ラグビーの場合は、世界を転戦するワールドシリーズが中断されたことで、高いレベルの実戦で経験値を上げようという日本代表の思惑が大きく狂ったのは間違いない。
だが、一般論では受け入れ易いこの「1年半」の停滞も、考え方を変えてみると本当に決定的な敗因だったのかという疑問も浮かんでくる。東京五輪への強化のカレンダーは、リオ五輪後をスタートラインに、2020年7月の東京大会キックオフを目指して進められてきた。1年の延期が決まったのは、東京五輪開幕のわずか4か月前のことだ。つまり、7人制代表は16年からの強化期間の大半を、20年7月をゴールラインとして取り組んできたのだ。岩渕HCは東京五輪までの1年半の強化を悔やんでいるが、まずチームの強化状態を評価、判断するべきタイミングは20年7月だろう。