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東京五輪前に考える「選手と報道」の距離 野口みずきが取材で味わった喜びと不信感

「THE ANSWER」は各スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、第一線を知る立場だからこその視点で様々なスポーツ界の話題を語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」をスタート。2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、陸上界の話題を定期連載で発信する。

金メダル獲得後に取材を受ける野口みずきさん(左)、選手とメディアの正しい距離感とは【写真:Getty Images】
金メダル獲得後に取材を受ける野口みずきさん(左)、選手とメディアの正しい距離感とは【写真:Getty Images】

「THE ANSWER スペシャリスト論」女子マラソン・野口みずきさん

「THE ANSWER」は各スポーツ界を代表するアスリート、指導者らを「スペシャリスト」とし、第一線を知る立場だからこその視点で様々なスポーツ界の話題を語る連載「THE ANSWER スペシャリスト論」をスタート。2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさんが「THE ANSWER」スペシャリストの一人を務め、陸上界の話題を定期連載で発信する。

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 今回は「金メダリストが思う『選手とメディア』の正しい距離感の作り方」。トップアスリートになればなるほど、切っても切り離せないメディアとの関係。野口さんは取材機会を力に変えた一方、連覇を目指した北京五輪の前は高まる注目度に苦労した。コロナ禍で開催可否に揺れる東京五輪に心苦しさを抱える選手たち。メディア対応で意識したこと、SNSとの付き合い方、アスリートがメディアに出る意義などを現役世代に向けて説いた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

 最も輝く瞬間を切り取ってもらいたい。そんな思いを持って発信していた。

 野口さんは23歳の時、初マラソンとなった02年名古屋国際女子マラソンで優勝し、03年世界選手権で銀メダルを獲得。翌年のアテネ五輪へ、有森裕子さん、高橋尚子さんに続くメダル獲得の期待を受け、日増しに注目度が高まっていった。現役時代、メディアに出ることについて、どんな心構えを持っていたのだろうか。

「初めて新聞に載った時は、嬉しくて仕方がなかったです。その気持ちがもっと強くなりたい、もっと取り上げてもらいたいという方向に繋がっていった。自分をPRできるし、所属する会社の名前を知ってもらえるいい機会。実業団は本当のプロではないですが、私は『お金をいただいている以上はプロ』と思っていたので、そういう機会は大切でした」

 人前に出ることを前向きに捉え、競技力向上に繋げた。マラソンではレース2日前に会見し、意気込みや調整具合を明かすのが恒例。「私は大風呂敷を広げるタイプ(笑)。ちょっと強気なコメントをしていました」。勝ちたい、いいタイムを出したいという気持ちを前面に表現していた。

 所属企業、スポンサーは自社のPRのためにアスリートを支援する。競技で結果を出すことはもちろん、しっかりとしたコメントを残せばより多くの注目を浴び、自ずと企業名の露出機会も増える。野口さんはそんなサイクルを理解しながら取材を受けていた。「どんな時もポジティブなことしか言わない。練習内容も自信を持って話していました」。言葉にすることで、重圧のかかるレース前でも前向きになれた。

 ただし、メディアの存在が全てプラスの方向に進んだわけではない。ストレスになってしまう時もあった。最も印象に残っているのは、北京五輪を控えた08年の春。連覇を目指す中、合宿中に各メディア合同の取材を受けた。

 メディア側からすれば、金メダリストの話を聞き、努力する姿を納められる貴重な機会。しかし、野口さんの頭は「女王」の重圧でいっぱいだった。ウォーミングアップから続いたテレビカメラの撮影。「やめてください」と思わずシャットアウトしてしまった。

「あの時、私の精神状態は特に酷かったです。ディフェンディングチャンピオンとして、自分で自分にプレッシャーをかけていた。ポイント練習(強度の高い本格的な練習)を撮ってもらうのはいいけど、ウォーミングアップはポイント練習をしっかりするために集中したい。ずっと撮られて集中できず、嫌な自分が出てしまった。凄く失礼な態度をとった時もあったので、それが北京五輪の欠場に繋がってしまったと思います」

 人に優しく、気遣いができる性格。だからこそ、「失礼な態度」をとった後に相手がどう思っているか気になってくる。「あの時、自分の中でいろんな闘いがありました」。ピリピリとした精神状態が続き、必要以上の練習に取り組んだ。結果的に左太ももを肉離れする負の連鎖。五輪本番の5日前に出場辞退を発表した。

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