熱狂のラグビーW杯から1年 日本代表躍進の立役者が語る“スポーツ分析の未来”
昨秋のラグビーワールドカップ(W杯)で史上初の8強入りを果たした日本代表でアナリストを務めた戸田尊氏(九州電力キューデンヴォルテクス・チーフアナリスト)が語る「日本代表躍進の真実」の後編。歴史を塗り替える戦いをデータ分析という視点から振り返り、AI(人工知能)などの最新テクノロジーも取り入れて進化を加速させるスポーツ分析の“これから”、そしてラグビーにもたらす可能性を語ってもらった。
ジェイミージャパンでアナリストを務めた戸田尊氏インタビュー後編
昨秋のラグビーワールドカップ(W杯)で史上初の8強入りを果たした日本代表でアナリストを務めた戸田尊氏(九州電力キューデンヴォルテクス・チーフアナリスト)が語る「日本代表躍進の真実」の後編。歴史を塗り替える戦いをデータ分析という視点から振り返り、AI(人工知能)などの最新テクノロジーも取り入れて進化を加速させるスポーツ分析の“これから”、そしてラグビーにもたらす可能性を語ってもらった。
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アイルランド戦の歴史的な勝利も含めた、大会を通しての日本代表のパフォーマンスは、アナリストの目にはどのように映っていたのだろうか。戸田氏は、データを引き合いに出しながら、チームの進化を解き明かしてくれた。
「日本代表のトライ数を見てみると、2015年の前回大会と比べると1試合平均で2.22個から3個に増えています(プール戦4試合のデータ)。キックも19回から23回に増え、ゲーム構造には、よりアンストラクチャーな展開が増えてきている。ボールインプレーも34秒増えています。このような混沌とした状況下での試合では、自分たちの役割を理解していないチームと理解しているチームというのは、ものすごく差がでてくる部分かなと思っています」
アナリストに就任した2017年当時は、選手たちはアンストラクチャーな状況を作り出しても、上手く意思疎通できずミスを犯し、キックカウンターを仕掛ける相手に十分にプレッシャーをかけられないことも多かったという。
「でも、選手は大会前の1年くらいで試合への対応力がものすごくついたと思います。2019年大会では、参加全チームのトライの61パーセントくらいがストラクチャ―(スクラム、ラインアウトなどのセットプレー)からだったのに対して、日本はアンストラクチャーから54パーセントのトライをとっていた。他国よりも、アンストラクチャーからしっかりスコアできる強みを示すことが、本番で出来たと思っています」
アイルランド戦では極力ボールを手放さない戦い方を徹底した一方で、大会を通じては、ジョセフHC就任当初から導入したキックで相手を揺さぶる戦法も日本の強みとして発揮することができた。それが、プール戦全勝という結果をもたらした。
戸田氏は「いかに相手の体力を奪い、勢いをなくしながら、一方で、自分たちは勢いのあるアタックをすることで、相手にプレッシャーをかけ続けることが出来るかがキーだった。それをしっかりと体現できた結果、我々のラグビーは他国とはまた違ったオリジナルを持てたのかなと思います」と、この大会を振り返っている。ベスト8という結果だけに留まらず、日本独自のスタイルを確立して、強豪国とも互角に戦えたことが大きな成果だった。