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多様性の実現を目指す社会に響く 車いすバスケを通じて香西宏昭が伝えたいこと

選手同士の特徴や違いを認め合い、支え合うことが車いすバスケットボールの「そこが一番の面白み」だという【写真:Getty Images】
選手同士の特徴や違いを認め合い、支え合うことが車いすバスケットボールの「そこが一番の面白み」だという【写真:Getty Images】

車いすバスケットボールを特徴づける持ち点制度「一番の醍醐味」

 車いすバスケットボールでは、選手はそれぞれ障がいのレベルに応じて持ち点が与えられている。持ち点は、最も障がいの重い1.0点から最も軽い4.5点まで0.5点刻みに分けられており、コート上でプレーする5選手の合計持ち点は14点以内と定められている。障がいの軽い選手から重い選手までバランス良く活躍の場が与えられる、この持ち点制度こそ「一番の醍醐味だと思っています」と香西は語る。

「それぞれの選手が持つ障がいの特徴だったり、その障がいによるプレーの特徴だったり、そういうのをお互いに理解し合いながら戦略に練り込んでいく。ここが一番面白いところだと思うんですよね。弱点かと思われる障がいの重い選手が誰かを生かすプレーをしたり、自分が生きるプレーをしたり。僕らも相手の弱点はどんどん突いていきたいですし、向こうはそれを分かって防ごうとする。次はどういう戦略でいこうか? 次は? そういう積み重ねの作業がすごく面白いと思います」

 健常者の中には、障がいの重い選手を弱点と見て戦略を立てることにためらう人もいるかもしれない。だが、健常者が行うバスケットボールでも、味方に身長が低い選手やジャンプ力に欠ける選手がいれば、チームとして他のメンバーで補う戦略を立てるし、対戦相手であれば弱点として狙う。コートの上に立てば1人の選手。障がいの程度は、それぞれの選手が持つ特徴だ。

 この点について、香西は「言葉にすると薄っぺらく聞こえるかもしれないんですけど……」と選びながらも言葉を紡いだ。

「お互いを理解して何々をするって、言葉にすると薄っぺらく聞こえるかもしれないんですけど、なんかそこが一番、僕が学んでいることでもあって。それこそ、普段の社会でも生きる、通ずるものが間違いなくあると思っているんですよね。例えば、小学校や中学校に講演で呼んでいただく時、それぞれに役割があるという話を結構するんです。だから、みんなもクラスの中で支え合えるといいよね、とか、お互いのいいところを認め合おうね、とか」

 みんなが同じである必要はない。それぞれが持つ特徴や違いを認め合い、支え合うことで成り立つ車いすバスケットボール。香西が「そこが一番の面白み」という競技の魅力には、万人に通じる社会的な基礎、そして障がい者と健常者の共生に欠かせないヒントが詰まっていると言えそうだ。

 近年では、性別、年齢、国籍、人種、宗教などの多様性を指す「ダイバーシティー」という言葉が一般的となってきた。違いを認め合いながら、誰もが過ごしやすい社会を目指す国際的なうねりの只中で、車いすバスケットボールの魅力を通じて香西が伝えたい思いは、多くの人の心に響くのではないだろうか。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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